【はじめに】

子宮内膜症は生殖年齢女性の約10%に発症するホルモン依存性の慢性疾患です。子宮内膜様組織が子宮腔外に異所性に存在し、骨盤内炎症や癒着、疼痛、不妊などを引き起こします。妊娠予後に影響を与える可能性が示唆されています。

【ポイント】

子宮内膜症患者では早産、前置胎盤などの周産期合併症リスクが上昇する可能性があります。

【引用文献】

Vendittelli F, et al. Fertil Steril. 2025;123:137-47. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.037

【論文内容】

子宮内膜症と周産期合併症の関係を調査することを検討した多施設レトロスペクティブコホート研究です。
フランス全土の103の分娩施設からのデータであるAUDIPOGネットワーク（Association des Utilisateurs de Dossiers Informatises en Pediatrie, Obstetrique et Gynecologie）を用いて、1999年から2016年まで368935妊婦（377,338児）を対象としました。
結果：
子宮内膜症あり群では、内膜症なし群と比較して、妊娠前の不妊既往(34.7% vs. 5.0%)、妊娠中の入院(27.4% vs. 19.8%)、予定帝王切開(14.0% vs. 8.7%)が多くなりました。37週未満の早産は子宮内膜症あり群で11.1%、内膜症なし群で7.7%、33週未満では各々3.1%と2.2%でした。交絡因子調整後のリスクは以下の通りです。
早産（Preterm birth）
 <37週：aRR 1.40 (95% CI: 1.18-1.67)
 <33週：aRR 1.53 (95% CI: 1.08-2.16)
妊娠高血圧症候群（Preeclampsia）
 aRR 1.64 (95% CI: 1.09-2.47)
前置胎盤（Placenta previa）
 aRR 4.29 (95% CI: 2.79-6.60)
産後出血（PPH）
 aRR 1.30 (95% CI: 1.04-1.62)
SGA（Small for gestational age）
 <10パーセンタイル：aRR 1.21 (95% CI: 1.05-1.40)
 <5パーセンタイル：aRR 1.23 (95% CI: 1.01-1.49)
 <3パーセンタイル：aRR 1.20 (95% CI: 0.94-1.54) 有意差なし
死産（Stillbirth）
 aRR 1.14 (95% CI: 0.57-2.29) 有意差なし

【私見】

今回の研究では「子宮内膜症および/または子宮腺筋症」を単一の疾患entity（疾患概念）として取り扱っていますが、以前から報告されている結果をほぼ一貫しています。
最近のメタアナリシスはこの2本です。

1. Joanne Horton, et al. Hum Reprod Update. 2019. DOI: 10.1093/humupd/dmz012
   体外受精成績が悪くなる、早産を含むさまざまな周産期合併症のリスク因子となりました（OR 1. 38、CI 1.01-1.89）。：帝王切開分娩（OR 1.98 CI 1.64-2.38）、分娩後の新生児室入院（OR 1.29、CI 1.07-1.55）など
2. Kjerstine Breintoft, et al. J Clin Med. 2021. doi: 10.3390/jcm10040667.
   子宮内膜症女性は、妊娠高血圧症候群、早産、前置胎盤、胎盤剥離、帝王切開、死産のリスクが高くなりました。

過去のブログ（子宮内膜症と体外受精ともに周産期予後に影響する？）にも記載していますが、それ以前のメタアナリシスでも下記のことが記載されています。

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#前置胎盤
#亀田IVFクリニック幕張

文責：川井清考（院長）

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