妊娠中hCG値と関連項目について(Eur J Epidemiol. 2015)

【はじめに】

ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は絨毛の合胞体栄養膜細胞層から分泌される妊娠ホルモンです。私たちは、妊娠判定の指標や子宮外妊娠フォローのためにのみ測定することが多いですが、妊娠9-14週の妊娠中hCG値がどのような項目と関連するか調査した報告をご紹介いたします。

【ポイント】

妊娠初期(9-14週)hCG値は、母体喫煙、BMI、出産歴、人種、胎児性別、胎盤重量、つわり症状などの影響を受けていそうです。

【引用文献】

Korevaar TI, et al. Eur J Epidemiol. 2015. doi: 10.1007/s10654-015-0039-0.

【論文内容】

Generation R研究に参加した8,195名の女性を対象に、血清総hCGレベルを測定しました。超音波による妊娠週数(US妊娠週数)を用いて妊娠週数特異的な基準範囲を計算し、最終月経による妊娠週数(LMP妊娠週数)およびモデルベースの基準範囲と比較しました。また、どの妊娠特性がhCGレベルと関連しているかを調査しました。
研究対象者の血液採取時期の中央値は妊娠14.4週(95%範囲:10.1-26.2週)でした(9週未満:32名、9週:50名、10週:106名、11週:255名、12週:790名、13週:1,418名、14週:1,069名、15週:800名、それ以降減少傾向)
体外受精治療例、双胎妊娠、人工妊娠中絶例は除外されています。
結果:
LMP妊娠週数はUS妊娠週数と比較して、特に中央値と下限値が低値でした。一般集団と合併症のない妊娠のみで計算された基準範囲の間に大きな差は見られませんでした。
関連項目は以下のとおりです。

  • 喫煙について:喫煙者はhCG値が低値でした
  • BMIについて:BMIと総hCG値には逆相関が認められました。この関連性は胎盤重量で補正後も維持されました
  • 出産歴について:経産婦のhCG値が低値でした。
  • 胎児性別について:男児妊娠でhCG値が低値でした。
  • 胎盤重量について:胎盤重量の増加に伴いhCG MoM値が上昇しました
  • つわり症状について:自覚症状が増加するほど、hCG MoMが上昇しました
  • 人種による違いについて:人種間でhCG値に有意な差が認められました

【私見】

この報告はあくまで妊娠13-14週前後の報告です。中央値を出してからMoMを計算して比較しています。妊娠10週以降はhCGがプラトーに達しているのでできる検証で、初期ではなかなか参考にしにくい結果ではあります。

#hCG
#妊娠12―14週
#関連項目
#自然妊娠
#亀田IVFクリニック幕張

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張