Euploid胚移植後、低hCG値は胎児異常を予測?(J Assist Reprod Genet. 2024)

血中hCG値は、妊娠判定に用いるルーチン検査です。今回、ニューヨーク大学の研究グループが、PGT-Aで染色体正常が確認された胚移植後の、このhCG値の臨床的意義について興味深い報告をしています。

【ポイント】

正常核型凍結融解胚移植後の胎児異常は、初期の血中hCG値が低値であることと関連している可能性があります。

【引用文献】

Heisler E, et al. J Assist Reprod Genet. 2024. Doi:10.1007/s10815-024-03325-0

【論文内容】

正常核型胚の凍結胚移植後の早期血清hCGレベルと胎児異常との関係を調査することを目的とした症例対照研究です。2010年1月から2021年12月の間に、単一生殖医療施設で、胎児異常が確認された10週以降の人工妊娠中絶例、または分娩時に異常が報告された症例を対象としました。対照群は、年齢および胚の日齢/グレードをマッチングさせた健常出生例としました。
結果:
周期28日目(4週0日)と35日目(5週0日)の血清hCGレベルは、異常群で低値でした(28日目:152 vs 177.5 mIU/mL、p<0.04;35日目:3033 vs 3744 mIU/mL、p<0.05)。異常群では、初期hCGが低値(50 mIU/mL未満が6.4%、51-100 mIU/mLが20.5%、101 mIU/mL以上が73.1%)であり、対照群(それぞれ3.8%、10.3%、85.7%)と比較して差を認めました(p<0.02)。しかし、28日目から35日目までのhCG上昇率には統計学的な差は認められませんでした(1758.0% vs 2097.0%、p=0.23)。

【私見】

hCGは胚盤胞の栄養外胚葉細胞から分泌されるホルモンです。胎盤の血管新生、血管形成、成長に関与します。
いままで、着床時期のhCGが低いと生まれる割合が低いとのみ、説明をしてきました。今回の結果をみると、低hCGで胎児異常が増えてきたことが原因なのかわかりませんが、注視して妊娠初期フォローアップする必要がありそうですね。特定の奇形タイプとhCG値の関連についても今後の研究課題と書いてあります。
今回の報告でのhCGが低く分娩に至った最小値は異常群:19.1 mIU/mL(心臓、性腺、腹部の異常)、対照群:31 mIU/mLでした。

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文責:川井清考(院長)

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