異常受精1PNのお話
これまでに受精確認のお話を何度かさせて頂いています。今回は異常受精の一つである「1PN」について再度、解説致します。
正常受精の場合、卵子の中に二つの袋が見えます。一つは女性の遺伝情報、もう一つは男性の遺伝情報が入っています。遺伝情報の袋は英語でPronucleus、これが二つ見えるので我々培養士はよく「2PN」と呼んでいます。
こちらの動画は、卵子の中に二つの袋が見える正常受精2PNになります。
今回は異常受精の一つである「1PN」のお話です。1PNなので卵子の中に袋が「一つ」しか見えない状態です。二つ見えなければならないところが、なぜ一つしか見えないのでしょうか?原因は二つあると考えられます。
一つ目の原因は二つ出なければならないところが片方の一つしか出なかったからと考えられます。こちらのアニメーションは、そのイメージを示しています。
二つ目の原因は二つが一緒になって融合してしまって一つになったからと考えられます。こちらのアニメーションは、そのイメージを示しています。二つが一つに融合しているので、袋の大きさは上のもの(片方の一つしか出なかったもの)に比べて大きいと考えられます。
こちらは実際の1PNの動画を二つ並べています。左側が再生された後、右側が再生されます。左側の袋の直径は24μm、右側の袋は37μmです。約1.5倍の違いがあります。左側の卵子は直径が小さいので片方の一つしか出ていないと考えられます。一方、右側の卵子は直径が大きいので二つが一つに融合していると考えられます。
片方の一つしか出ない原因ですが、ハッキリとは分かりません。卵子側の袋のみが出ているのか?精子側の袋のみが出ているのか?も分かりません。しかし、精子の質が悪いと精子側の袋が出にくいのではないか?という印象があります。
二つが一つに融合する原因もハッキリとは分かりませんが、精子が卵子の核の近くに侵入して(注入されて)精子と卵子の核の距離が近すぎて一つに融合する可能性があります。
1PNとなる原因は不明ですが、我々培養士が関わる部分で回避するためには顕微授精において、➀より質の高い精子を選ぶ、➁卵子の核の位置を確認して近すぎない場所に精子を注入する、の二点が考えられます。今後、この二点をより強く意識して少しでも1PNの割合を下げる様にしたいと思います。
文責:平岡謙一郎(培養室長)
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