体外受精における胚培養戦略:Day3胚移植 vs 全胚盤胞培養(J Assist Reprod Genet. 2024)
体外受精-胚移植において、胚盤胞移植は臨床妊娠率と出生率を向上させることが確認されています。良好な卵巣予備能を持つ患者では、胚盤胞培養により発生能力の高い胚を選択することができます。しかし、胚盤胞に到達せず移植キャンセルリスクがあります。この報告を採卵あたりの累積出生率を上げるならば?初期胚移植を検討すべきかどうか?という報告です。諸々思うとところがあり、取り上げることにしました。
【ポイント】
胚移植回数に制限がないのであれば、Day3で良好胚が0-2個の場合は、全胚盤胞培養よりもDay3胚移植を選択することで、累積出生率が向上する可能性があります。
【引用文献】
Wei H, et al. J Assist Reprod Genet. 2024. https://doi.org/10.1007/s10815-024-03365-6
【論文内容】
GnRHアンタゴニスト法を用いたART患者における最適な培養・胚移植戦略の選択について検討することです。2018年1月から2022年6月に4,131名の初回採卵周期データを用いた後方視的研究で、Day3での新鮮胚を考慮する部分的胚盤胞培養(PBC)戦略と全胚盤胞培養して新鮮胚移植を検討する(WEC)戦略の2群に分類し、さらにDay3良好胚数により3サブグループ(0-2個、3-7個、8個以上)に分けて検討しました。主要評価項目は採卵あたりの累積出生率としました。
結果:
傾向スコアマッチング後、サブグループ1(0-2個)ではPBC戦略がWEC戦略と比較して高い累積出生率を示しました(33.0% vs 25.7%、P=0.018)。サブグループ2および3では、2つの胚管理戦略間で累積出生率に差は認められませんでした。
【私見】
こちらは移植回数の制限がある国内ではなかなか当てはまらない治療選択だと思います。サブグループ1がなぜ高い累積出生率を示したかは、胚盤胞に到達せず移植できない周期があったからです。胚移植成績が変わらないのに、移植できない周期が入ってくる分だけ成績が下がった状況です。また胚移植個数も初期胚1.8個、胚盤胞1.5個なので、なかなか胚移植回数を一回犠牲にして、多胎リスクを背負ってまで胚移植にこだわらなくても、胚盤胞にならなければ仕切り直しでもいいのかなとも感じてしまいます。なお、サブグループ1は女性年齢34歳、回収卵子数7個弱に場合の結果となっています。間違った解釈が普及しないよう、あとあと流し読みをして誤解しないようにしておかないといけない報告だと思っています。
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文責:川井清考(院長)
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