低所得国での双胎妊娠増加予測(Hum Reprod. 2024)

双胎出生率(1000出産あたりの双胎数)は、過去数十年間で世界的に約10%増加しています。双胎出生率の変動は、主に二卵性双胎の割合によって左右されます。一卵性双胎は人口1000出生あたり3-4名と一定である一方、二卵性双胎は高齢出産と関連しています。高所得国では生殖補助医療の普及が双胎出産率増加の主な要因とされていますが、低所得国における変化についてはあまり知られていません。

≪ポイント≫

低所得国において、出生時の母体年齢高齢化により、2050年までに双胎出生国での双胎妊娠増加予測率が増加し、2100年にはさらなる増加が予測されます。

≪引用文献≫

Lee DS, et al. Hum Reprod. 2024. Doi: 10.1093/humrep/deae276

≪論文内容≫

低所得国における母体年齢構造の変化と人口増加が将来の双胎出生率にどのような影響を与えるかを検討することです。人口保健調査(DHS)および世界出生力調査(WFS)のデータに基づいて年齢別双胎確率を推定し、国連世界人口推計(WPP)で予測される高齢出生へのシフトに起因する2050年と2100年の双胎出生数の変化を推定しました。
結果:
2050年までに大半の国で双胎出生率が2010年比で0.3%-63%増加、2100年までには双胎出生率が3.5%-79%増加すると予測されます。インドは人口規模が大きいため、2100年までに双胎出生が10.5%減少すると推定されるものの、双胎出生の最大シェアを維持しそうです。ナイジェリアは、著明な人口増加と高い双胎出生率により、2番目に多い双胎出生数になると予測されます。

≪私見≫

生殖補助医療の普及が遅い低所得国においても、母体年齢高齢化と人口増加により双胎出生率が増加する可能性を示唆しています。低所得国での双胎児は公衆衛生や医療不整備により児の死亡率や障害が残る割合が考えられるからです。 高齢妊娠は胚の染色体異常がおこるから双胎にはなりにくいと思っていましたが、1970年代から高齢女性の双退がふえることは立証されているようですね(Bulmerら,1970、Searら,2001、Pisonら,2015、Rickardら,2022)。高齢妊娠の双胎が増える理由として、複数排卵や着床における免疫寛容が働く種の保存機構があるためと考えられています。このあたりを不妊治療に応用できたらいいのですが、なかなか難しい課題です。

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文責:川井清考(院長)

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