子宮体がん初期の妊孕性温存治療についてのメタアナリシス(Am J Obstet Gynecol. 2024)
子宮体がんの発症率は増加傾向にあり、特に若年層での増加が顕著です。この傾向は肥満の増加や出産年齢の高齢化などの要因が影響していると考えられます。標準治療は全子宮摘出術ですが、これは妊孕性消失につながります。若年で挙児希望のある患者さんにとって、ホルモン療法による妊孕性温存治療は重要な選択肢となっています。経口プロゲスチン療法とレボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)の12ヶ月完全寛解率、その後の妊娠率についてのメタアナリシスをご紹介いたします。
≪ポイント≫
早期子宮体がんに対する経口プロゲスチン療法とレボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)の12ヶ月完全寛解率はそれぞれ66%と86%でした。
≪引用文献≫
Suzuki Y, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024. doi: 10.1016/j.ajog.2024.07.018
≪論文内容≫
生殖年齢の早期子宮体がん患者に対する2つの主要なプロゲスチン療法(経口プロゲスチンとレボノルゲストレル子宮内避妊システム)の治療成績を検討したシステマティックレビュー/メタアナリシスです。754名の生殖年齢子宮体がん女性のうち、490名が経口プロゲスチン、264名がLNG-IUSによる治療を受けました。
結果:
12ヶ月以内の完全寛解率は経口プロゲスチン群で66%(95%CI: 55-76%)、LNG-IUS群で86%(95%CI: 69-95%)でした。Grade 1の症例に限定した場合、完全寛解率は経口プロゲスチン群で66%(95%CI: 54-77%)、LNG-IUS群で83%(95%CI: 50-96%)でした。異常値を示す研究を除外した後、プールされた完全寛解率は経口プロゲスチン群で66%(95% CI、57-73)、LNG-IUS群で89%(95% CI、75-96)となり、異質性が減少したことが示されました。妊娠率は経口プロゲスチン群で58%(95%CI: 37-76%)、LNG-IUS群で44%(95%CI: 6-90%)、生産率は経口プロゲスチン群で39%(95%CI: 23-57%)、LNG-IUS群で24%(95%CI: 2-84%)でした。
≪私見≫
NCCNガイドラインでの子宮体がんの妊孕性温存治療にLNG-IUSが推奨されていることを裏付ける結果かと思います。
妊娠率・生産率の評価ですが、LNG-IUS群の信頼区間が非常に広く、データの不確実性が高そうです。今後の国内での子宮体がん初期の妊孕性温存治療の動向をみながら寛解後の妊活に対して正しい情報提供をしていけたらと考えています。
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文責:川井清考(院長)
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