子宮内膜症術後疼痛に対するメトロニダゾールの疼痛効果(Am J Obstet Gynecol. 2025)
子宮内膜症は生殖年齢女性の10%に影響を与える疾患です。腹腔鏡下手術は疼痛を改善できますが、術後も20-37.5%で疼痛が持続するとされています。近年、マイクロバイオームの異常が子宮内膜症に関連していることが示唆されていて、メトロニダゾールは動物実験で炎症マーカーと子宮内膜症病変の大きさを減少させることが示されているため、ヒトでの臨床応用ができないかどうかを検証した報告です。
≪ポイント≫
内膜症術後14日間のメトロニダゾール内服は、プラセボと比較して術後6週間での疼痛持続に有意差を認めませんでした。
≪引用文献≫
Quevedo A, et al. Am J Obstet Gynecol. 2025. doi: 10.1016/j.ajog.2024.07.006
≪論文内容≫
内膜症術後にメトロニダゾールを14日間内服することで術後の疼痛持続が減少するかを検討した無作為化多施設二重盲検プラセボ対照試験です。18-50歳の152名を対象とし、最終的に88名が無作為化され、72名が解析対象(18.2%の参加者が追跡不能または治療中止)となりました。主要評価項目は術後6週間での主観的疼痛持続の有無としました。副次評価項目には、Endometriosis Health Profile-5、Female Sexual Function Index、および視覚的アナログスケールによる、生活の質、性機能、子宮内膜症関連痛スコアとしました。
結果:
2グループの患者背景は類似していました。メトロニダゾール群とプラセボ群で疼痛持続に有意差を認めず(84% vs 88%, P=0.74)、生活の質、性機能、子宮内膜症関連痛スコアなどの副次評価項目でも有意差は認められませんでした。
≪私見≫
臨床試験では、メトロニダゾールの内膜症術後疼痛改善効果は認めませんでした。マイクロバイオームの変化が子宮内膜症の病態に関与している可能性は高いものの、2週間という比較的短期間の抗生物質投与では不十分なのかもしれません。ただし、抗生剤を長期投与することも非現実的であり、今後は食事療法やプロバイオティクスなどの長期的なマイクロバイオーム介入の検討が必要かもしれません。
内膜症では、FusobacteriumやEscherichia coliなどの増加が認められており、細菌由来のメディエーターを介して免疫系の活性化や神経系への影響を通じて炎症と疼痛を引き起こす可能性が示唆されています。
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文責:川井清考(院長)
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