母体年齢と非染色体性先天異常の関係:メタアナリシス(Am J Obstet Gynecol 2024)
WHO(世界保健機関)のデータによると、新生児の約6%が先天性異常を持って生まれています。非染色体先天異常(NCAs:nonchromosomal congenital anomalies)の病因は完全には解明されていません。非染色体先天異常発症における母親年齢との関連は知られていますが、文献には一貫性がありません。
母体年齢と非染色体性先天異常の関連についてのシステマティックレビュー・メタアナリシスをご紹介いたします。
≪ポイント≫
若年(20歳未満)および高齢(35歳以上)の妊娠では、非染色体性先天異常のリスクが有意に上昇することが明らかになりました。
≪引用論文≫
Pethő B, et al. Am J Obstet Gynecol 2024. doi: 10.1016/j.ajog.2024.05.010
母体年齢が非染色体性先天異常(NCAs)に与える影響を評価し、スクリーニングプロトコルを改善するために実施されたシステマティックレビューとメタアナリシスです。PRISMA 2020ガイドラインに従い、MEDLINE、Cochrane Library、Embaseの3つのデータベースを用いて2021年10月19日までに公表された研究を検索しました。
母体年齢がNCAsの発生率に与える影響を評価した人口ベースの研究を対象とし、年齢範囲、国、合併症の有無による制限は設けませんでした。研究間の異質性を考慮し、効果量のプールにはランダム効果モデルを用いました。
結果:
15,547件の研究から72件が選択しました。
35歳以上の妊娠では非染色体性先天異常のリスクが31%上昇(RR: 1.31, CI: 1.07-1.61)、40歳以上では44%上昇(RR: 1.44, CI: 1.25-1.66)しました。染色体異常依存を除外した場合でも40歳以上では25%のリスク上昇(RR: 1.25, CI: 1.08-1.46)が見られました。具体的な異常については、口唇口蓋裂:40歳以上でリスク57%上昇(RR: 1.57, CI: 1.11-2.20)、循環器系異常:40歳以上でリスク94%上昇(RR: 1.94, CI: 1.28-2.93)、腹壁破裂(ガストロシーシス):20歳未満で約3倍のリスク上昇(RR: 3.08, CI: 2.74-3.47)となりました。
≪私見≫
高齢妊娠におけるNCAsリスク上昇要因は、体外受精実施割合の増加、慢性疾患併存率の増加、環境有害因子への長期暴露が考えられていて、若年妊娠におけるNCAsリスク上昇要因は、不適切なプレコンセプション時期、社会経済的不利、栄養不足が考えられています。つまり、一部は予防できうる可能性を秘めています。プレコンセプションを整えることは今後の社会的課題だと考えています。
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文責:川井清考(院長)
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