胚盤胞期胚移植と分割期胚移植の先天性異常と周産期予後における比較:システマティックレビューとネットワークメタアナリシス(Ultrasound Obstet Gynecol. 2023)

体外受精における胚移植のタイミングは臨床的に重要な課題です。
胚盤胞移植と分割期胚移植における累積出生率の比較:多施設共同ランダム化比較試験(BMJ 2024)
胚盤胞期胚移植と分割期胚移植の先天性異常と周産期予後における比較した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

胚盤胞期胚移植は分割期胚移植と比較して、先天性異常や周産期予後において同等の安全性を示しました。

≪引用論文≫

Siristatidis C, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 2023. doi: 10.1002/uog.26019

2022年2月までに発表された研究について、ペアワイズメタアナリシスにより胚盤胞移植と分割期胚移植の先天異常発生率と周産期予後を比較し、ネットワークメタアナリシスにより新鮮胚盤胞移植、凍結胚盤胞移植、新鮮分割期胚移植、凍結分割期胚移植の転帰を評価しました。主要評価項目は先天性異常率で、評価項目として早産率(37週未満)、低出生体重(2,500g未満)、児の性別、周産期死亡率、健康新生児(正期産、2,500g以上、28日以上生存、先天異常なし)と設定しました。
結果:
文献検索により550件の研究が検索され、33件がシステマティックレビューに含まれました。
先天性異常の発生率に有意差は認められず(RR 0.80、95%CI 0.63-1.03)、周産期予後も同等でした。新鮮胚移植での胚盤胞期胚移植は男児出生がやや高い傾向にありました(RR 1.07、95%CI 1.06-1.09)。凍結胚盤胞期胚移植では新鮮胚盤胞移植(RR、0.76(95%CI、0.60-0.95))、または新鮮分割期胚移植(RR、0.74(95%CI、0.59-0.93)に比べて低出生体重のリスクが低下しました。凍結胚盤胞移植は新鮮分割期胚移植と比較して周産期死亡リスク上昇と関連していました(RR、2.06、95%CI、1.10-3.88))。胚盤胞移植後に男児出生が高い傾向は、ネットワークメタアナリシスでも同様でした。すべての結果は、エビデンスの確実性が非常に低いと評価されました。

≪私見≫

胚盤胞期胚移植は分割期胚移植と比較して、先天性異常や周産期予後には差はほぼなさそうですね。
胚盤胞移植で男児出生が高い傾向は6論文の新鮮分割期胚と胚盤胞胚移植で性差を調査したメタアナリシスでも同様の結果(男児>女児OR 1.29, 95% CI 1.10-1.51)となっています。
Hye Jin Chang, et al.Fertil Steril. 2009 Jun;91(6):2381-90. doi: 10.1016/j.fertnstert.2008.03.066.
動物種では、男性胚の方が発育は早く、胚盤胞の段階で移植胚として選択されやすいのでは?とされています。
周産期死亡リスクは基本1%未満です。周産期死亡リスクは地域による医療格差もありますから、他の要因も含めて注視していきます。

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文責:川井清考(院長)

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