体外受精における受精卵の発育過程と評価
◇受精卵の発育過程
卵子は小さな球体で1個のボールのような状態です。卵子の中に精子が入って受精すると、受精卵は成長(=細胞分裂)を始めます。細胞分裂を繰り返すことにより、細胞の数は1個(1細胞)→2個(2細胞)→4個(4細胞)→8個(8細胞)と倍々に増えます。8細胞になると細胞同士が溶け合って融合して一つの塊となり、あたかも1細胞のようになります(融合)。これは縮んだ水風船のような状態で、受精卵が周りの水を中に取り込んで風船はどんどん膨らんで大きくなっていきます(初期胚盤胞〜完全胚盤胞)。風船が大きくなることで、受精卵を取り囲んでいる殻(透明帯)は薄くなって(拡張胚盤胞)、やがて亀裂が入り、その亀裂から受精卵は外に出始め(脱出胚盤胞)、最終的に殻の外に完全に出ます(孵化胚盤胞)。
◇受精卵の評価はなぜ必要?
体外受精において、卵子と精子が受精した受精卵の評価はとても大切です。この受精卵はお腹に戻した後、赤ちゃんになる可能性がどれ位あるのか、お腹に戻す(凍結する)方が良いのか、戻さない(凍結しない)方が良いのか、赤ちゃんになる可能性が高い受精卵が何個かある場合、どの受精卵からお腹の中に戻すのが良いのか等、受精卵の評価は患者さんに一日も早く妊娠して頂くための治療方針決定に大きく関わっています。
◇受精卵評価のタイミング
当クリニックで受精卵の評価を行うタイミングは二つ、一つは受精卵が4細胞〜8細胞の初期胚と呼ばれる時期、もう一つは受精卵が見た目上風船のように見える胚盤胞と呼ばれる時期です。こちらに「初期胚」と「胚盤胞」の評価方法を掲示致します。どちらの評価も数字あるいはアルファベットが3文字並んでいますが、これらが意味するところは「初期胚」と「胚盤胞」で全く違います。当クリニックで受け取られた受精卵の評価をこちらの図を活用して理解して頂ければと思います。
◇初期胚の評価
評価の対象になるのは主に、細胞の数、細胞分裂により生じた粒々の割合(フラグメンテーション)の割合、細胞の大きさの均等性となります。Veeck分類と呼ばれています。
◇胚盤胞の評価
評価の対象になるのは主に、風船の大きさ、将来赤ちゃんになる部分の細胞の大きさ、将来胎盤になる細胞の数となります。Gardner分類と呼ばれています。
文責:平岡(培養士)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。