移植について(2019年9月時点での当院での治療の進め方)

移植について、当院では新鮮胚移植・凍結融解胚移植ともに行っております。2019年1-6月に行った移植実績では新鮮胚移植が10%、凍結融解胚移植が90%でした。凍結融解胚移植の内膜準備では、患者さま自身の排卵を用いた「排卵周期凍結融解胚移植」が15%、薬で調整して移植日を決定する「ホルモン補充周期下凍結融解胚移植」が85%となっています。2017年度までは排卵周期凍結融解胚移植、新鮮胚移植を50%以上の患者で行っていましたが、内膜のずれをみる検査(ERA検査など)の導入により現在の割合になっています。

良好胚を移植しても着床できない原因については様々な報告がありますが、内膜のずれは着床不全の患者さまの約25%の原因であるとRuiz-Alonso Mらが2013年Fertil Sterrilに報告しています。「着床の窓」と呼ばれる時間は、マウスでは証明されていますが、ヒトに関しては本当に存在するのか、また存在したとしてもどの程度の期間なのかは明確になっていません。着床に不妊原因がない方はそこまで厳密に管理をしなくても、一般的に言われている基礎体温が上がってから5日前後に胚盤胞移植を行えば着床すると考えます。2018年日本受精着床学会総会・学術講演会では、田中らがホルモン補充周期胚移植で黄体補充を行ってから4日目、5日目、6日目に胚盤胞移植しても、移植回数が3回未満の場合は差がないと報告しており、私も同様の考えをもっています。ただし、1-2回目で良好胚を戻しても着床しない場合は着床側の検査を行うことが治療成績を改善すると考えています。

良好な胚から移植しますのでバイアスはありますが、当院では出産される方の約7割が2回目までの移植で出産に至っおり、また、2回移植を行って超音波で妊娠が確認されていない方に着床側の検査を行うと約8割の方が何らかの検査でひっかかります。もちろん、ホルモン補充周期下凍結融解胚移植に不向きな方もいらっしゃいますので、全員に同じ治療方針は当てはまりませんが、ある程度のエビデンスがある治療を提供していきたいと思います。

医療は日々進歩しますので適宜振り返りを行いながら治療選択を行っていきます。

文責:川井(医師)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。