子宮内膜ポリープ切除は電気切除?組織回収システム?(Int J Gynaecol Obstet. 2023)

組織回収システムであるMyoSureはシェーバータイプと言われ、回転と往復運動を組み合わせて、組織をしっかり切除するソリューションです。海外では、2009年にFDAから承認され、その高い効率性、安全性、子宮内膜保護の利点から国内でも使用施設が増えてきています。ただし、ディスポーザルで使用する機材が高額であるため、医療施設側にとっては導入を渋りたくなる理由もないわけではありません。電気ループを用いた切除との違いを検討した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

MyoSureには、手術時間短縮、生殖予後改善という利点がありますが、粘膜下筋腫症例実施には限界があり術前評価が重要となりそうです。

≪論文紹介≫

Jiahui Yong , et al. Int J Gynaecol Obstet. 2023 Oct;163(1):115-122.  doi: 10.1002/ijgo.14863.

生殖年齢女性における子宮内良性病変において、子宮鏡下組織回収システム(MyoSure LITE)と子宮鏡下電気切除術の臨床効果と生殖成績を比較・分析することを目的とした後方視的研究です。主要評価項目は手術時間、切除の完全性、生殖転帰とし、副次評価項目は周術期有害事象、セカンドルック子宮鏡検査で認められた術後癒着としました。
結果:
MyoSure群のFIGO 0型またはI型筋腫、子宮内膜ポリープ、絨毛・胎盤遺残患者の手術時間は電気切除群より短くなりましたが、II型筋腫の患者では差はありませんでした。完全切除率は粘膜下筋腫群では、MyoSure群で電気切除群より低くなりました。セカンドルック子宮鏡での子宮内癒着は、MyoSure群で低くなりました。妊娠までの期間と妊娠率はMyoSure群で良好な結果となりましたが(13.14±7.85ヶ月 vs. 16.26±8.22ヶ月、P = 0.040、65.12% vs. 54.55%、P = 0.045)、満期産率、早産率、流産率には差は認めませんでした。周産期合併症の胎盤位置異常もMyoSure群で低くなりました。

≪私見≫

MyoSureは電気切除に比べて止血効果は乏しいです。あくまで止血は子宮収縮能に頼らざるとえません。ただ、構造上切除の深さは浅く組織ダメージは少なくなるため、止血困難症例はほぼ発生しません。反対に熱による二時的内膜損傷がないため、内膜再生が早く妊娠間までの期間の短縮や胎盤位置異常などの周産期合併症の軽減につながる可能性が示唆されました。

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文責:川井清考(院長)

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