内膜ポリープに対する日帰り子宮鏡手術の疼痛評価(Aust N Z J Obstet Gynaecol. 2015)
子宮内膜ポリープは不妊原因になります。小さいポリープであれば放置していても自然消退、もしくはあるままで妊娠することもありますが、不妊治療は妊娠・出産効率をあげる治療ですから患者様に負担なく妊娠効率を増加させられるのであれば内膜ポリープは切除するに越したことはないと思っています。
以前は、子宮内膜ポリープ切除のため入院をすることもありましたが、組織回収システムなどの良い機材がでてきてからは日帰り内膜ポリープ切除が増えてきています。組織回収システムを用いた日帰り内膜ポリープ切除の満足度などを調査した前向き研究をご紹介いたします。
≪ポイント≫
組織回収システムを用いた日帰り内膜ポリープ切除は、患者にとって負担が少なく満足度が高い治療となっています。
≪論文紹介≫
Patrick McIlwaine, et al. Aust N Z J Obstet Gynaecol. 2015 Oct;55(5):482-6. doi: 10.1111/ajo.12382.
Myosure LITEを用いて外来患者を対象に子宮内膜ポリープの切除を行った閉経前および閉経後の女性患者の満足度と痛みのスコアを比較することを目的とした前向き試験です。局所麻酔下(1%のリドカイン 5mlを用いた傍頚管ブロック)の子宮内膜ポリープ切除術を希望した患者42名を対象としました。MyoSure LITE デバイスを装着した 6.25mm の子宮鏡を使用して処置を行いました。処置直後にアンケートを用いました。疼痛レベルはVASスコアを用いて評価し、切除時間と有害事象も抽出いたしました。
結果:
子宮内膜ポリープの平均サイズ 13mm、平均切除時間 39.4秒でした。95.2%の症例で完全切除ができました。VAS中央値は2.7(範囲0.7~7.5)でした。経腟分娩既往の有無、帝王切開既往の女性間で、痛みに差は認めませんでした。閉経後女性は閉経前女性より痛みが低くなりました(2.5 vs. 3.2、P = 0.047)。全体として、女性は非常に満足しており、97.6%が友人にもこの処置を勧め、95.2%が必要であれば将来再びこの処置を受けることを検討してもよいと回答しました。合併症発生率は4.8%で、すべて軽度のものでした。
≪私見≫
当院でも粘膜下子宮筋腫を合併していたり、悪性腫瘍を疑う症例以外の子宮内膜ポリープ切除は日帰り手術で行っています。以前より鋏鉗子などを用いた子宮鏡を用いた日帰り手術をおこなっていましたが、2023年5月からmyosure manual、2024年5月からmyosure LITEの組織回収システムを導入し月10件以上の症例をコンスタントに実施しています。
今回の報告では局所麻酔で行っていますが、私たちは現在のところ静脈麻酔にて患者様が眠っている状態での手術を行なっています。今回の報告の完遂できなかった、合併症が起こった迷走神経反射、頚管拡張時のトラブルは鎮静下に行うことで大半は回避できると思っています。
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文責:川井清考(院長)
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