新鮮単一胚移植+凍結単一胚移植 vs. 新鮮複数胚移植(Hum Reprod. 2024)
2周期連続単一胚移植(2SET群)と1周期連続二重胚移植(DET)の有効性と安全性に関するエビデンスは不十分です。2022年3月22日までのメタアナリシスでは、12件の報告から累積出生率は同等ですが、多胎率は2SET群の方が低いこと、胚盤胞だけに関して言うと2SET群とDET群では2SET群の方が累積出生率は高いことが示されています。
Yangqin Peng, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2022 doi: 10.3389/fendo.2022.920973.
新鮮単一胚移植+凍結単一胚移植 vs. 新鮮複数胚移植を示した報告が出てきましたのでご紹介いたします。
≪ポイント≫
38歳未満や有効胚数が2個より多いサブグループでは新鮮単一胚移植+凍結単一胚移植の方が新鮮複数胚移植より良好な結果となりました。
≪論文紹介≫
Zheng Wang, et al. Hum Reprod. 2024 Nov 1:deae245. doi: 10.1093/humrep/deae245.
新鮮胚移植にて分割期胚を二個移植するのと、新鮮胚移植にて分割期胚を一個移植し、その後の凍結融解胚移植周期にて一個胚盤胞期胚を移植する場合とで妊娠転機に差があるかどうか調査したレトロスペクティブPSM研究です。
2011年1月から2019年12月に中国生殖医療施設にて体外受精治療を受けた女性の臨床データベースからデータを収集し2021年12月まで追跡調査を行いました。新鮮胚移植にて分割期胚を一個移植し、その後の凍結融解胚移植周期にて一個胚盤胞期胚を移植する場合(2SET群、976名)と新鮮胚移植にて分割期胚を二個移植する場合(DET群、976名)で比較検討し、年齢(38歳)、有効胚個数(2個)に基づいてサブグループ解析も行いました。
結果:
不妊期間、原因不明不妊率、調節卵巣刺激方法は、両群間で有意に異なっていたため調整を行いました。臨床的妊娠(55.5% vs. 42%、aOR 1.87[1.55-2.26])および生児出生(44.8% vs. 34.5%、aOR1.63[1.35-1.97])は2SET群で増加しました。早産率は2SET群で低くなりました(aOR 0.64[0.42-0.96])。単胎児の新生児出生体重は両群間で同じでした(aB 4.94 g[-84.5~94.4])。生児出生率に対する有益効果は、38歳以上の症例や2個の胚しか利用できなかった症例では消失しました。
≪私見≫
国内では移植回数で保険診療回数が規定されているため、複数胚移植を望む患者が増えている印象を受けます。適切な情報提供を続けていくことが必要ですね。国内では全胚凍結が多いため、今回のようなパターンは多くない印象を受けますが、患者様に説明するうえでも納得感がある報告だと感じています。
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文責:川井清考(院長)
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