移植子宮内膜厚は癒着胎盤と関連(Am J Obstet Gynecol. 2024)

凍結融解胚移植時の癒着胎盤の予測因子は、非白人人種、子宮筋腫核出術既往、持続性または消失性前置胎盤、子宮内膜厚の薄さ(7mm以上に移植する条件下で9.7mm cut off)、血清E2ピーク値であることが示されています。
Daniel J Kaser, et al.Fertil Steril. 2015 May;103(5):1176-84.e2. doi: 10.1016/j.fertnstert.2015.01.021.
胚移植で出産に至った症例の子宮内膜厚と癒着胎盤スペクトルの関連を示した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

主な所見
移植子宮内膜厚が7mm未満になると癒着胎盤スペクトルとの関連が強く示されました。子宮内膜厚が10.9mm以下の場合、1mm増加するごとに癒着胎盤スペクトル発生率は32%減少することがわかりました。

≪論文紹介≫

Siying Lai, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Nov;231(5):557.e1-557.e18. doi: 10.1016/j.ajog.2024.02.301.

生殖補助医療を受ける女性において、着床前の子宮内膜厚と癒着胎盤スペクトルの関連を評価することを目的として実施されたレトロスペクティブコホート研究です。2008年1月から2020年12月に中国施設にて帝王切開分娩既往がなく生殖補助医療により妊娠・出産した女性4,637名を本研究の対象としました。
結果:
癒着胎盤スペクトラムを有する妊娠(159名;3.4%)は、胚移植前子宮内膜厚の薄さと関連がありました(癒着胎盤スペクトラムでない妊娠、10.08±2.04mm vs. 癒着胎盤スペクトラム、8.88±2.21mm;P<.001)。スムーズカーブフィッティングにより、子宮内膜厚は、10.9mmまでは癒着胎盤スペクトル発生率に影響を及ぼし、それ以上ではプラトーになりました。子宮内膜厚さ4群(≦7、>7〜≦10.9、>10.9〜≦13、>13mm)に分けると、癒着胎盤発生率はそれぞれ11.91%、3.73%、1.35%、2.54%でした。子宮内膜厚が10.9~13mmの女性と比較すると、潜在的交絡因子を調整した後、子宮内膜厚が7~10.9mmの場合の調整オッズ比2.27(95%CI、1.33-3.86)から、7mm未満の場合の調整オッズ比7.15(95%CI、3.73-13.71)に、癒着胎盤スペクトラムのオッズは増加しました。前置胎盤は、癒着胎盤スペクトラムの独立した危険因子として残りました(調整オッズ比、11.80;95%CI、7.65-18.19)。さらに、7mm未満の子宮内膜の厚さは、PSM後のマッチドコホートにおいても、癒着胎盤スペクトラムの独立した危険因子となりました(調整オッズ比、3.91;95%CI、1.57-9.73)。

≪私見≫

今回の報告では、癒着胎盤スペクトラムを示した症例は凍結融解胚移植症例が多くありました。また、前置胎盤単独発生率は内膜厚とは関連はなさそうです。

体外受精の移植前子宮内膜厚は臨床的妊娠率/生児出生率との相関とは別に、最近の研究では、妊娠高血圧症候群、分娩後出血、SGA児との関連を示唆する報告も出てきています。今後も注視していきたいと思います。

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文責:川井清考(院長)

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