卵子の保管場所について(その三)

前回は卵子凍結の際、保存容器に乗せる卵子の数が、3の倍数でない場合、端数がある場合等の状況により1~3個に変わることを説明しました。今回は数だけでなく、卵子の成熟度によっても保存容器に乗せる卵子の数が1~3個に影響されることを説明します。

以前の記事で紹介した顕微授精の解説で体の外に取り出された卵子の成熟度(女性に例えると【年齢】)は、
・未熟(女性に例えると【幼児~小学生】)
・成熟(女性に例えると【大人】)
に分かれます。

顕微授精では、
・未熟(幼児~小学生)→顕微授精しない
・成熟(大人)    →顕微授精する
ということになります。

これは卵子凍結でも同じで、あくまでも、顕微授精ができる状態の卵子を凍結することが社会的卵子凍結の目的なので、
・未熟(幼児~小学生)→顕微授精しない≒凍結しない
・成熟(大人)    →顕微授精する≒凍結する
ということになります。

卵子凍結で次に考えなければならないのは成熟している卵子の数になります。
仮に1回の採卵で、卵子が4個採れた場合、考えられる成熟度のパターンは5つあります。
① 4個成熟+0個未熟
② 3個成熟+1個未熟
③ 2個成熟+2個未熟
④ 1個成熟+3個未熟
⑤ 0個成熟+4個未熟

成熟している卵子の数が3の倍数でない場合、端数がある場合等の状況により保存容器に乗せる卵子の数が1~3個に変わることになります。

また、未熟な卵子はしばらく待っていると遅れて成熟するものもあるので、遅れて成熟した卵子も凍結の対象になります。
採卵当日の11:00に卵子の回りの粒々細胞を取り外す裸化をした時点で未熟であっても、その日のうちに遅れて成熟して、その日のうちに凍結できる場合もあれば(2段目)、採卵翌日に遅れて成熟して、採卵翌日に凍結できる場合もあります(3段目と4段目)。
未熟な卵子がある場合、卵子が成熟するのをいつまで待つのか考える必要があります。

以上、3回に分けて社会的卵子凍結の保管場所について説明致しました。

社会的卵子凍結をお考えの方は、
・一つの保存容器に保管できる卵子の数は最大3個まで
・一つの保存容器に3個保管したら、融解する時は3個全てまとめて融解しなければならない(1個だけ融解、あるいは、2個だけ融解はできない)
・成熟している卵子のみ凍結して、未熟な卵子は遅れて成熟してから凍結することもある
の3点を頭の片隅に入れて頂ければと思います。

分かりづらい点がございましたら、お気軽にスタッフにお聞きください。

次回は卵子凍結をするときの卵子の形態の変化を動画で紹介致します。

文責:平岡謙一郎(培養室長)

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亀田IVFクリニック幕張