子宮内膜ポリープとビタミンD濃度との関連(Hum Reprod. 2024)
子宮内膜ポリープは多くの場合、子宮内膜腺、間質、血管、線維組織の増殖によって引き起こされ、肥満、過剰なエストロゲン、インスリン抵抗性、慢性子宮内膜炎、タモキシフェン使用がリスク因子をされています。血清ビタミンD値と不妊患者における子宮内膜ポリープの関連をしめした報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
血清25(OH)D値は、不妊女性における子宮内膜ポリープ発生率と非線形相関を示しました。
≪論文紹介≫
Ruiqiong Zhou, et al. Hum Reprod. 2024 Oct 28:deae241. doi: 10.1093/humrep/deae241.
血清ビタミンD値は、不妊患者における子宮内膜ポリープ(EP)の発生率と関連するかどうかを調査した横断研究です。 2019年1月から2023年10月まで中国における治療施設データを用いて子宮鏡検査を受けた3107名の患者を登録しました。642名が子宮内膜ポリープを有し、2,465名が正常子宮でした。子宮鏡検査所見には、子宮内膜ポリープの有無、ポリープの大きさ、多発ポリープの割合、慢性子宮内膜炎発生率が含まれました。血清ビタミンDは、total25(OH)D測定により評価しました。ビタミンD欠乏症に関する国際的なガイドラインの推奨に従って、患者は<50nmol/L群と≧50nmol/L群の2群に分けました。血清25(OH)D値と子宮内膜ポリープリスクとの関連を検討しました。
結果:
23.8%(740/3107)がビタミンD欠乏(<50nmol/l)でした。子宮内膜ポリープ発生率は、25(OH)D<50nmol/L群で≧50nmol/L群より有意に高くなりました(24.9% vs. 19.3%;P=0.001)。しかし、ポリープの大きさ、多発ポリープの割合、慢性子宮内膜炎の有無については、両群間に差はありませんでした。交絡因子をコントロールした結果、25(OH)D≧50nmol/l(<50nmol/lと比較)は、子宮内膜ポリープ発生リスクと負の相関を示しました(aOR、0.733;95%CI、0.598-0.898)。子宮内膜ポリープ発生率に影響を与えた他の変数には、BMI、不妊症のタイプ、CA125、CD138陽性細胞がありました。さらに、年齢と血清25(OH)D値との間の線形回帰モデルは、正の線形関連を示しました。異なる年齢群についてサブグループ解析を行ったところ、子宮内膜ポリープ発生リスクは、若年サブグループ(23.8% vs. 19.1%)および高齢サブグループ(28.0% vs. 19.9%)のいずれにおいても、25(OH)D<50nmol/L群で≧50nmol/L群よりも高くなりました。スムーズカーブフィッティングモデルは、25(OH)D値と子宮内膜ポリープ発生リスクとに非線形相関を示し(非線形P値=0.020)、25(OH)D値の最適閾値は51.8nmol/Lでした。サブグループのスムーズカーブフィッティングモデルでは、35歳未満の患者では25(OH)D値と子宮内膜ポリープ発生リスクとに非線形相関が認められたが(非線形P値=0.010)、35歳以上の患者では25(OH)D値と子宮内膜ポリープ発生リスクに線形相関が認められました(非線形P値=0.682)。
≪私見≫
ビタミンDは主にカルシウムとリン代謝調節に関与し、また細胞増殖、分化、アポトーシス、抗炎症、免疫調節にも重要な役割を果たしている。この報告者らもディスカッションでふれていますが、あくまで相関関係があっただけで、本当に直接作用かどうかは判断できないとのこと。慢性子宮内膜炎は>5 CD138 positive cellsとし、こちらではビタミンDと関連がありませんでしたが、CD138陽性細胞の有無では関連があったとなっています。先行論文も明確にないため、今後追試を注視していきたいと思います。
ビタミンDは、基本摂取が好ましいですね。ビタミンD単位換算は1nmol/L≒0.4ng/mLとなります。
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文責:川井清考(院長)
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