PGTのための複数回生検・凍結は成績を低下させる(メタアナリシス:Hum Reprod. 2024)

PGTは、凍結融解にかかる処置・生検にかかる物理的ダメージなど様々なストレスがかかり、手技ひとつひとつのダメージの積み重ねが胚質を低下させる可能性があります。つまり、培養室・手技実施者の技術差も大きく影響し得ます。また、生検を2回しなくてはいけない状態の胚盤胞は初回PGT結果が適切にでていないわけですから、生検できるtrophectoderm数がもともと少ない、trophectoderm自体がすでにアポトーシスしている細胞が多いなど、染色体数として正常核型だったとしても総合的に胚質はよくないことも起因するかもしれません。PGTのための複数回生検・凍結の生殖予後に関するメタアナリシスがでましたのでご紹介いたします。

≪ポイント≫

生検2回+凍結融解2回群または生検1回+凍結融解2回群はともに生児出生率/継続妊娠率および臨床妊娠率を低下させます。

≪論文紹介≫

Kate Bickendorf, et al. Hum Reprod. 2024 Oct 7:deae235. doi: 10.1093/humrep/deae235.

生検1回+凍結融解1回群と比較して、生検2回+凍結融解2回群または生検1回+凍結融解2回群は、正常胚盤胞移植後の生殖予後を悪化させるかどうか調査したシステマティックレビュー・メタアナリシスです。PROSPERO(CRD42023469143)に登録されたプロトコルを用いて、システマティックレビュー・メタアナリシスを行いました。2023年8月30日にPUBMED、EMBASE、Cochrane Libraryにおいて、‘biopsy’ 、‘vitrification’、および関連するキーワードから関連研究を検索しました。PGT-Aで検査された正常核型胚盤胞凍結融解移植を含む研究のみを対象とし、PGT-MまたはPGT-SRを含む研究は除外しました。研究群は「生検2回+凍結融解2回群(BCBC群)」または「生検1回+凍結融解2回群(CBC群)」とし、対照群は「生検1回+凍結融解1回群(BC群)」としました。主要評価項目は臨床妊娠、副次評価項目は生児出産/妊娠継続、流産、融解後生存率などとしました。リスク比と95%CIを用いてランダム効果メタ解析にて臨床転帰を比較検討しました。
結果:
607件の報告から最終的に9件の報告(論文6件、抄録3件)が組み入れられました。BC群と比較して、BCBC群は臨床妊娠率の低下(6件、n = 18754; RR = 0.80, 95% CI = 0.71-0.89; I2 = 0%)および生児出生/継続妊娠率の低下(7件、n = 20964; RR = 0.72, 95% CI = 0.63-0.82; I2 = 0%)と関連していました。しかし、流産率(7件、n=22332;RR=1.40、95%CI=0.92-2.11;I2=53%)および融解後生存率(3件、n=13562;RR=1.00、95%CI=0.99-1.01;I2=0%)には、BCBC群で変化を認めませんでした。
さらに、CBC群は、臨床妊娠率の低下(6件、n=13284;RR=0.84、95%CI=0.76-0.92;I2=39%)および生児出生/継続妊娠率(7件、n=16800;RR=0.79、95%CI=0.69-0.91;I2=70%)とも関連していました。CBC群は流産率の増加(5件、n=15781;RR=1.48、95%CI=1.31-1.67;I2=0%)がみられましたが、融解後生存率は変化が認められませんでした(3件、n=12452;RR=0.99、95%CI=0.97-1.01;I2=71%)。

≪私見≫

メタアナリシスに含まれた研究はすべてレトロスペクティブであり、異質性はさまざまでした。どの胚盤胞までPGTを実施するか、また再生検を行う胚盤胞の基準を定めるかなど施設ごとの生殖予後と照らし合わせ、ルールを検討していく必要がありそうです。

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文責:川井清考(院長)

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