PGTのための複数回凍結は成績を低下させる(Reprod Biomed Online. 2021)

着床前検査を実施したときに結果が出てこない確率が1.5%前後あるとされていて、複数回のtrophectoderm生検や凍結融解が必要となることがあります。それ以外にも、一度凍結した胚を融解し着床前検査を実施したくなるタイミングに様々な場面で遭遇します。複数回のtrophectoderm生検や凍結融解が、その後の生殖予後に影響を与えるかどうか調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

複数回のtrophectoderm生検や凍結融解は生殖予後に影響を与える可能性が強いですが、成績差がない報告もあり手技による影響が示唆されます。

≪論文紹介≫

Ashley Aluko, et al. Reprod Biomed Online. 2021 Mar;42(3):572-578. doi: 10.1016/j.rbmo.2020.11.019.

複数回のtrophectoderm生検や凍結融解が体外受精生殖予後に悪影響を及ぼすかどうか調査したレトロスペクティブコホート研究です。2013年から2017年に単一胚盤胞移植を実施しPGT-Aのためにtrophectoderm生検を実施した患者を3つのグループに分けました。3つのグループは、生検1回+凍結融解1回(BC群、n = 2603)、生検1回+凍結融解2回(CBC群、n = 95)、生検2回+凍結融解2回(BCBC群、n = 15)。主要評価項目は生児出生とし、副次評価項目には妊娠反応陽性、臨床的妊娠、流産としました。
結果:
生検1回+凍結融解2回群は、生検1回+凍結融解1回群と比較して、生児出産率が低く(aRR 0.57、95% CI 0.41~0.79)、臨床妊娠も低くなりました(sRR 0.67、95% CI 0.53~0.85)。流産率は生検1回+凍結融解2回群と生検1回+凍結融解1回群で同じでした(aRR 1.3、95% CI 0.64~2.7)。

  BC群、n = 2603 CBC群、n = 95 BCBC群、n = 15
妊娠反応陽性 72.5% 57.9% 60.0%
臨床的妊娠 62.4% 38.9% 46.7%
流産 6.6% 8.4% 0%
生児出生 55.1% 28.4% 46.7%

≪私見≫

今回の報告BCBC群では有意差がつかなったのは、症例数が少ないからでしょうか。過去の同様の報告に比べて今回の報告で成績差が大きいのは手技による影響なのかもしれません。
成績低下は着床しない、生化学的妊娠が増える可能性がある、が今回の結果のようです。
複数回のtrophectoderm生検や凍結融解の生殖予後が悪化する可能性はしっかり事前に情報提供する必要がありそうです。

  BC群 CBC群 BCBC群
生児出生      
Bradley et al. (2017) 50.0% 38.5% 27.3%
Ciamodo et al. (2018) 42.9%   38.8%
Aluko, et al.(今回) 55.1% 28.4% 46.7%
生児出生+妊娠継続      
Taylor, et al.(2014) 54.0% 50.0% 0%
妊娠継続      
Neal, et al.(2019) 66.8% 63.2% 50.0%

Bradley CK, et al.Fertility and sterility. 2017.108, 999–1006
Cimadomo D, et al. Human reproduction.2018.33,1839–1846
Taylor TH, et al.Reproductive biomedicine online.2014. 29, 59–64
Neal SA, et al. Journal of assisted reproduction and genetics.2019.36,2103–2109

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文責:川井清考(院長)

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