低受精率カップルにCaイオノフォアは有効?(Front Endocrinol (Lausanne). 2023)

卵子活性化処理は生殖補助医療において保険診療で行うことができます。受精卵作成にあたり受精卵作成の成功率を向上させることを目的として実施した場合、卵子調整加算として1,000点を顕微授精の所定点数に加算できます。ただし、卵子活性化を行う単為発生を起こす可能性なども考えられ、必要な症例に限った実施が好ましいとされています。
国内低受精率カップルにCaイオノフォアによる卵子活性化処理の有効性、安全性、生殖予後を調査した報告をご紹介します。

≪ポイント≫

低受精率(50%未満)カップルにはCaイオノフォアを用いた卵子活性化処理は試行してみる価値がありそうです。

≪論文紹介≫

Kazuhiro Akashi, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2023 Mar 9:14:1131808.  doi: 10.3389/fendo.2023.1131808.

Caイオノフォアを用いた人工卵子活性化(AOA)が、原因不明の低受精率カップルの生児出生率を改善するかどうかを検討した大規模多施設レトロスペクティブ研究です。国内17生殖医療施設からデータを収集しました。2015年1月から2019年12月に、198組のカップルを対象としました。AOA介入群と対照群の卵子は、同じカップルからの卵子での解析としました。原因不明でICSI受精率50%未満から得られた卵子を対照群、その後にAOAを実施して得られた卵子をAOA介入群としました。ICSI-AOAの有効性、安全性、生殖予後を評価しました。
除外基準は回収卵子数2個未満、受精率50%以上、精巣上体精子・精巣内精子、初診時年齢42歳以上の女性、Caイオノフォア以外の卵子活性化処理としました。
結果:
AOA介入群(2920卵子)では、対照群(1973卵子)と比較して、胚移植あたりの着床率が高くなりました(18.0%[57/316])(オッズ比4.5、95%CI 1.6-12.6;P<0.05)。AOA介入既往のない若いカップルにおいて、より高い生児出生率が観察されました。流産率、早産率、胎児先天形態異常率は同程度でした。ICSI-AOAは、周産期リスクを増加させることなく受精障害を減少させる可能性がある。AOAは顕微授精の受精率が50%未満のカップルに行うことができる。

≪私見≫

受精率50%未満を卵子活性化の対象としたのは下記の2報を参考にしています。同グループからの報告でありますが、一本は観察研究で受精率29%以下に卵子活性化処理は有効、一本は前向き研究で50%未満に有効としています。
Montag M, et al. Reprod BioMed Online.2012. doi: 10.1016/j.rbmo.2012.02.002
Ebner T, et al. Reprod BioMed Online. 2015. doi: 10.1016/j.rbmo.2014.11.012

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文責:川井清考(院長)

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