絨毛遺残を疑う基準は?(Acta Obstet Gynecol Scand. 2021)

絨毛遺残 (RPOC)の診断に関する標準化された基準はいまだ確立されていません。妊娠初期中絶もしくは流産に対して、過去の報告ではどのような基準を用いて判断しているのか調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

絨毛遺残の診断基準は明確に定まっていません。一番多く用いられている基準は、内容物排出後2週間前後で超音波検査での子宮内膜厚15mmというラインでした。

≪論文紹介≫

Charlotte C Hamel, et al. Acta Obstet Gynecol Scand. 2021 Dec;100(12):2135-2143. doi: 10.1111/aogs.14229.

2020年3月まで、人工妊娠中絶または初期流産の絨毛遺残に関する英語論文をPubMed、EMBASE、Cochrane libraryにて系統的に検索しました。診断ツール、これらのツールで使用されるパラメータ、カットオフ値、フォローアップのタイミングを評価しました。
結果:
1,233件の報告がヒットし、248件339,517名の報告を選択しました。79件のランダム化比較試験では、6つの診断ツールが特定され、14種類の組み合わせで55種類のカットオフ値が採用されていました。169件の観察研究では、7つの診断ツールが特定され、28種類の組み合わせで89種類のカットオフ値が採用されていました。経腟超音波で測定した子宮内膜厚15mm以上を絨毛遺残(RPOC)のカットオフ値とする方法が最も多く用いられていました。フォローアップのタイミングについては大きなばらつきがあり、ランダム化比較試験では55通り、観察研究では107通りがありました。排出後2週間前後に行われることが最も多く認められました。子宮内膜厚が15mm以上との診断的価値については、十分に評価されていませんでした。
子宮内膜厚が15mmをRPOCのカットオフ値として用いた3研究では、94%以上の高い特異度と75%から100%の感度が示されています。

≪私見≫

現段階では排出後2週間フォローアップを経腟超音波検査で行うのが一般的かなと思います。早期発見したときに追加処置をおこなうかどうかは非常に悩ましいところです。そちらに関しては下記のような報告があります。

MVA法を行った10週未満妊娠患者466名に術後1週間で性器出血があり、疼痛・妊娠兆候の持続、異常帯下、発熱などが伴った患者を症状ある絨毛遺残疑いとしたところ15名(3.2%)が該当しました。再度MVA法を実施したところ12例に組織的に絨毛遺残を認めました。無症状であった451名は、その後経過観察可能でした。結論として、無症候性患者では、異常な超音波所見が時間の経過と共に正常に戻るため、RPOCの診断は超音波所見に基づいて行うべきではないとしています。
Yusuf Aytaç Tohma, et al. J Obstet Gynaecol Res. 2016 May;42(5):489-95. doi: 10.1111/jog.12944.

この結果が、早期発見し、早期再介入をすればRPOC-EMVが重篤化することを予防できることを意味するのかはわかりません。やはり早い段階で疑うこと、症状があるかどうかを確認することが重要かなと感じました。

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文責:川井清考(院長)

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