流産術(MVA法)後の絨毛遺残頻度(BJOG. 2009)

妊娠初期流産における外科的治療法として子宮内膜掻爬術(Dilatation & Curettage: D &C)、電動真空吸引法(Electoric Vacuum Aspiration:EVA)、手動真空吸引法(Manual Vacuum Aspiration:MVA)があります。
MVA法は、低侵襲で安全な子宮内容除去術として推奨されています。
安全であるということは内膜侵襲が少ないということになりますが、代わりに絨毛遺残発生頻度はどの程度あるのでしょうか。

≪ポイント≫

MVA法の絨毛遺残頻度は5%前後です。

≪論文紹介≫

D S Milingos, et al. BJOG. 2009 Aug;116(9):1268-71.  doi: 10.1111/j.1471-0528.2009.02223.x.

妊娠初期の不全流産・稽留流産の患者246名におこなったレトロスペクティブ研究です。MVA法前に処置が中止されたため、1名は分析から除外されました。MVA法の有効性は94.7%(232/245)でした。絨毛遺残を疑った症例は5.3%(13/245)で、1例は偽腔形成疑いであったため12例(4.89%)を絨毛遺残と判断しました。3.26%は再手術、1.63%は待機的管理でした。85%の患者がcervical primingを行っていました。

≪私見≫

この報告では、子宮内膜掻爬術(Dilatation & Curettage: D &C)の絨毛遺残頻度が2-3%と報告されているので、手動真空吸引法(Manual Vacuum Aspiration:MVA)はやや絨毛遺残が多い可能性は否定できないねというディスカッションになっています。絨毛遺残は診断する時期や定義が定まっていないので、今後、定まっていってほしいですね。

MVA法と他の外科手技に関連する最近のランダム化比較試験では以下の報告があります。MVA法は初期流産に対して安全で、効果的であることは間違いなさそうです。

  1. MVA法(超音波あり)では内膜癒着はEVA 法(超音波なし)に比べて低い。
    Jacqueline Pui Wah Chung, et al. BMC Pregnancy Childbirth. 2024 Feb 14;24(1):135. doi: 10.1186/s12884-024-06328-y.
  2. 術後合併症リスクに差はないけれど、MVA法はD &C法やEVA法にくらべて短時間である。
    Toshiyuki Kakinuma, et al. BMC Pregnancy Childbirth. 2020 Nov 16;20(1):695. doi: 10.1186/s12884-020-03362-4.

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文責:川井清考(院長)

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