低頻度モザイク胚の出産後転機(Fertil Steril. 2024)

モザイク胚出産例の研究はまだ多くありません。

  • モザイク胚出生は周産期・新生児転機変わらないとしています。ただし、Manuel Viottiらは出生児にモザイクの状態を継続している児がいることも報告しています。
    Antonio Capalbo, et al. Am J Hum Genet. 2021 doi: 10.1016/j.ajhg.2021.11.002.
    Chun-I Lee, et al. J Assist Reprod Genet. 2020 doi: 10.1007/s10815-020-01876-6. Manuel Viotti, et al. Fertil Steril. 2023 doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.07.022.
  • 高頻度・低頻度モザイク胚の臨床転機:高頻度でも生まれる場合は生まれるとしています。
    Pin-Yao Lin, et al. J Clin Med. 2020 doi: 10.3390/jcm9061695.
  • メタアナリシス:モザイク胚移植は妊娠継続・出生率の低下、流産率の上昇にはつながるが、出産する期待はもてるとしています。

3歳までの慢性疾患発症率まで調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

モザイク胚移植後妊娠・出産では正常核型胚移植後妊娠・出産と3歳までの妊娠時・出産時・3歳までの予後が変わらないことが示されました。ただし、モザイク胚移植後妊娠・出産の半数の方が出生前検査を実施していました。

≪論文紹介≫

Ruth Morales, et al. Fertil Steril. 2024 Sep;122(3):537-539. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.04.040.

低頻度モザイク胚移植から生まれた子供と、正常核型胚移植から生まれた子供の周産期および出生後の転帰を比較することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。2017年10月から2022年8月に出産につながったPGT-Aを実施した凍結融解胚移植周期を対象としました。Euploid胚出生児(115児)またはモザイク胚出生児(57児)に対して比較検討しました。モザイク頻度は25%~50%としました。
結果:
妊娠管理時および分娩時の合併症、分娩種類、妊娠期間などは、両群で同等でした。母体年齢のみがモザイク群で高くなりました。新生児については、出生時体重、身長、頭囲、アプガースコアに差は認められませんでした。NICU入院、先天性異常、慢性疾患(3歳前後で検証)など、その他の出生後の結果についても差異は認められませんでした。

≪私見≫

モザイク胚移植で出産にいたった症例を対象にしていること、モザイク妊娠され出産した患者の50.9%は出生前スクリーニングを実施していること、も差がなかった理由かもしれません。
モザイク群でみられた軽度defectは、股関節形成不全3名と顔の軽度形態異常2名、皮膚異常(カフェオレ斑または血管腫)が2名、異所性腎が1名、合指症が1名、その他異常が1名でした。ただし、正常胚群でも115中10名に先天性形態異常がみつかっておりモザイク胚出産だから形態異常との関連があるわけではありません。

#PGT-A
#モザイク胚出産
#着床前検査
#出生予後
#亀田IVFクリニック幕張

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張