PCOS女性の経口避妊薬(COCP)との関わり方(ESHREガイドライン2023)
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性が妊娠を望まない時期、どのように経口避妊薬(COCP)を使用すべきでしょうか。またメトホルミンは併用すべきでしょうか。ESHREガイドライン2023のEBR(エビデンスに基づく推奨)、CR(コンセンサスに基づく推奨)、 PP(実践上のポイント)をご紹介いたします。
経口避妊薬との関わり方
- EBR(エビデンスに基づく推奨)
経口避妊薬(COCP)は、多毛症および/または不規則な月経周期の管理を目的として、PCOS生殖年齢女性に推奨できる。 - EBR(エビデンスに基づく推奨)
経口避妊薬(COCP)は、多毛症および/または不規則な月経周期の管理を目的として、PCOS診断がされた もしくは強く疑われる思春期女性に考慮できる。 - EBR(エビデンスに基づく推奨)
医療従事者は、PCOS生殖年齢女性の多毛症治療において、高用量エチニルエストラジオール(≥ 30㎍)と低用量エチニルエストラジオール(< 30 ㎍)間に臨床的な利点はないと考えてよい。 - EBR(エビデンスに基づく推奨)
PCOS生殖年齢女性および思春期女性に経口避妊薬(COCP)を処方することは一般集団においても考慮すべきである。現段階ではプロゲスチン、エストロゲンの種類・用量の推奨はない。 - EBR(エビデンスに基づく推奨)
子宮内膜保護を目的として、プロゲスチン単独経口避妊薬を考慮してもよい。
ただし、一般集団によるエビデンスが中心でPCOS女性ではエビデンスが少ない。 - PP(実践上のポイント)
- PCOS女性の現在直面している主たる症状に対処するため、美容療法などの他の治療法を考慮することが重要である。
- 経口避妊薬の有効性と安全性に関する正しい情報を共有したうえでの共同意思決定が推奨される。結果、服薬アドヒアランスが改善する可能性が高い。
- エストロゲン製剤については、有効性、代謝リスクプロファイル、副作用、費用、入手可能性を考慮する必要がある。
- PCOS女性に対する経口避妊薬に関するエビデンスは限られているため、一般集団ガイドラインを参考にしながら使用・評価していく必要がある。
- 経口避妊薬の相対的および絶対的禁忌および副作用については注意し、個別に話し合う必要がある。
- PCOS女性に多い体重過多や心血管系リスク因子に対する経口避妊薬リスクは適宜話し合う必要がある。
メトホルミンと経口避妊薬の組み合わせ
- EBR(エビデンスに基づく推奨)
経口避妊薬(COCP)は、PCOSにおける不規則な月経周期に伴う多毛症の管理に、メトホルミンよりも効果的である可能性が高い。 - EBR(エビデンスに基づく推奨)
メトホルミンは、PCOSにおける代謝性改善に対して経口避妊薬(COCP)よりも使用される可能性がある。 - EBR(エビデンスに基づく推奨)
経口避妊薬(COCP)とメトホルミンの併用は、BMI<30のPCOS生殖年齢女性において、経口避妊薬(COCP)またはメトホルミン単独よりも臨床的利益がほとんど追加されない可能性がある。 - PP(実践上のポイント)
経口避妊薬(COCP)とメトホルミンの併用は、BMI > 30 、糖尿病リスク因子、耐糖能異常がある女性には有用かもしれない。 - PP(実践上のポイント)
経口避妊薬(COCP)が禁忌、受け入れられない場合、メトホルミンは不規則な月経周期に対して考慮される。多毛症に対しては、他の介入が必要となる。
https://www.eshre.eu/Guidelines-and-Legal/Guidelines/Polycystic-Ovary-Syndrome
≪私見≫
不妊症治療施設と一般婦人科は別施設であることが多い傾向があります。PCOS
女性は妊娠を望まない時期からしっかりサポートしていく環境を生殖医療に関わる医療者は準備していく必要があると思っています。
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文責:川井清考(院長)
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