PCOS女性のプレコンセプション時期推奨事項(ESHREガイドライン2023)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性にはプレコンセプション時期にどのような関わりをもったらよいのでしょうか。ESHREガイドライン2023のEBR(エビデンスに基づく推奨)、CR(コンセンサスに基づく推奨)、 PP(実践上のポイント)をご紹介いたします。

  • EBR(エビデンスに基づく推奨)
    過剰体重が不妊治療における生殖予後(臨床的妊娠率、流産率、出産率)に及ぼす悪影響についてPCOS女性にカウンセリングを行うべきである。
  • CR(コンセンサスに基づく推奨)
    日常的なプレコンセプションケアの一環として、PCOS女性が妊娠を計画する場合には、体重、血圧、喫煙、アルコール、食事および栄養状態、葉酸の補給、運動、睡眠、精神面、情緒面、および性的な健康状態を最適化してできるように健康状態を改善すべきである。
  • PP(実践上のポイント)
    妊娠・出産に関するライフプランと健康状態を最適化するための年齢に応じた教育は、健康的なライフスタイル、過剰体重の予防、プレコンセプションリスク因子の最適化を含め、PCOSと診断される思春期および成人女性に推奨される。
  • PP(実践上のポイント)
    医療従事者は、許可を得た上で、体重およびBMIを評価し、プレコンセプション時期の健康における体重とライフスタイルの重要性について対話を開始することが推奨される。
  • PP(実践上のポイント)
    糖尿病、高血圧、不安、うつ病、その他の精神疾患などの慢性疾患は、最適に管理されるべきであり、女性は有害な妊娠転帰のリスクについてカウンセリングを受けるべきである。

https://www.eshre.eu/Guidelines-and-Legal/Guidelines/Polycystic-Ovary-Syndrome

PCOS女性のプレセコンセプションケアには、日常的な推奨事項とPCOS特有の推奨事項を含めるべきです。PCOS女性の妊娠・不妊の合併症は、妊娠糖尿病、早産、妊娠高血圧症候群、流産、妊娠までの期間が長いこと、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高いことなどが挙げられます。不安やうつ病もPCOSの特徴であり、定期的なスクリーニングが推奨されています。体重に伴う問題を向き合う必要があるとされています。
BMI 18.5~24.9「標準体重」と、BMI 25kg/㎡「高体重」と分類されたPCOS女性を比較した16件の研究において、高体重女性より標準体重女性は、高い出産率(1.39 [1.17,1.65])と、着床率(1.35 [1.11, 1.62])、臨床的妊娠率(1.54 [1.09, 2.18])を示しています。11件の研究において、高体重女性より標準体重女性は、排卵率が高く、流産率が低いことも報告されています。
ただし、プレセコンセプション時期のどの程度の期間での適切な減量幅はまだエビデンスが不足しているため、今後注視していく必要があります。

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文責:川井清考(院長)

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