帝王切開(子宮切開)は一層縫合?二層縫合?長期予後(Am J Obstet Gynecol. 2024)
帝王切開分娩の増加により、帝王切開瘢痕症候群含めた合併症が増加しています。帝王切開瘢部のニッチ形成は、子宮破裂や癒着胎盤スペクトラム障害など、その後の妊娠における様々な婦人科的愁訴や合併症と関連しています。帝王切開(子宮切開)の一層縫合か二層縫合かがニッチ形成のリスク因子になる可能性が考えられていますが、現在のところ仮説の段階にとどまっています。帝王切開(子宮切開)の一層/二層縫合が、その後の産婦人科・生殖予後との関連を調査した報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
帝王切開(子宮切開)は一層縫合でも二層縫合でも、その後の妊娠に関わる予後、婦人科症状に関わる予後ともに変わりません。
≪論文紹介≫
Carry Verberkt, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Sep;231(3):346.e1-346.e11. doi: 10.1016/j.ajog.2023.12.032.
帝王切開(子宮切開)のロックなし一層縫合と二層縫合の、3年間の追跡調査における生児出生率への影響を評価することを目的とし、副次的な目的として、婦人科学的転帰、妊孕性転帰、産科学的転帰に焦点を当てたオランダ32病院で実施された多施設二重盲検ランダム化比較試験です。初回帝王切開分娩を受けた18歳以上の女性を、子宮切開部閉鎖が1層である群と2層である群に無作為に割り付けました(1:1)。長期追跡の主要転帰は生児出生率であり、副次転帰として妊娠率、不妊治療の必要性、分娩様式、産科的および婦人科的合併症としました。
結果:
2016年から2018年に2Close試験では2292名の女性を無作為に割り付け、一層縫合では1,144名中830名、二層縫合では1,148名中818名が3年間のアンケートに回答しました。生児出生率に差は認められませんでした。妊娠率、不妊治療の必要性、分娩様式、その後の妊娠における子宮破裂にも差はありませんでした。点状出血(30%〜32%)、月経困難症(47%〜49%)、性機能障害(Female Sexual Function Indexスコア、23%)などの婦人科的症状は両群で高率にみられましたが、差を認めませんでした。
≪私見≫
帝王切開(子宮切開)は一層縫合・二層縫合は術者の好みのあわせて行なってよさそうですね。今回のRCTでは、むしろ帝王切開手術時間やコストパフォーマンス、ニッチ形成含めて考えると一層縫合の方が良さそうな結果となっています。
過去の報告としては9RCTのメタアナリシスでも一層縫合・二層縫合差がなしとなっていますし、mini reviewでも差がないのでは?と記載されています。特にS. Robergeはシンプルで勉強になりました。そしてロックあり縫合糸がダメな理由も再認識です。
A. Di Spiezio Sardo, et al. Ultrasound Obstet Gynecol, 50 (2017), pp. 578-583
S. Roberge, E. Bujold. BJOG, 122 (2015), p. 1542
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文責:川井清考(院長)
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