水溶性プロゲステロン皮下注射の凍結融解胚移植成績(レトロスペクティブ研究)

水溶性プロゲステロン皮下注射黄体補充における凍結融解胚移植での使用成績(レトロスペクティブ研究)を2本ご紹介いたします。

≪論文紹介≫

① Emre Niyazi Turgut, et al. Turk J Obstet Gynecol. 2020 Dec;17(4):240-246. doi: 10.4274/tjod.galenos.2020.01460.

2018年6月から2020年4月に実施されたホルモン補充周期凍結融解胚移植507周期の単一施設レトロスペクティブコホート研究です。349名(68.8%)には1日1回油性プロゲステロン筋肉注射50mgが投与され、158名(31.2%)には1日2回水溶性プロゲステロン皮下注射25mgが投与されました。初回単一胚盤胞移植のみを対象としました。基準は、女性年齢37歳未満、BMI 18-35、精子濃度 500万/mL以上、着床前検査周期は対象外としました。 主要評価項目は生児出産率としました。
結果:
水溶性プロゲステロン皮下注射群と油性プロゲステロン筋肉注射群は、それぞれ妊娠検査陽性率(81% vs. 78.2%; p=0.474)、臨床的妊娠率(71.5% vs. 71.6%; p=0.979)、生児出生率(62.7% vs. 58.7%; p=0.404)、流産率(10.9% vs. 16.5%; p=0.144)に差を認めませんでした。二項ロジスティック回帰分析を行なっても、プロゲステロン投与方法で統計的有意差は認めませんでした(p=0.731)。

② Engin Turkgeldi, et al. Reprod Biomed Online. 2020 Aug;41(2):248-253. doi: 10.1016/j.rbmo.2020.04.007.

ホルモン補充周期凍結融解胚移植214周期の単一施設レトロスペクティブコホート研究です。107周期には水溶性プロゲステロン皮下注射50mg/日が投与され、107周期にはプロゲステロン腟剤180mg/日が投与されました。女性に対して1回の単一胚盤胞移植のみを対象としました。主要評価項目は、生児出生率または妊娠継続率としました。
結果:
水溶性プロゲステロン皮下注射群とプロゲステロン腟剤群は、それぞれ妊娠検査陽性率(64.5% vs. 58.9%; p = 0.40; RR 1.1; 95% CI 0.89 to 1.35)、生児出生率または妊娠継続率(39.3% vs. 35.5%; p = 0.57; RR 1.11; 95% CI 0.78~1.56)、流産率(29% vs. 25.5%; p = 0.68; RR 1.08; 95% CI 0.76~1.55)と差がありませんでした。

≪私見≫

内因性プロゲステロン分泌がない状況では、水溶性プロゲステロン皮下注射50mg/日が妥当な量でありそうですね。

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文責:川井清考(院長)

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