水溶性プロゲステロン皮下注射の凍結融解胚移植成績(F S Rep. 2022)

水溶性プロゲステロン皮下注射黄体補充における体外受精臨床成績については新鮮胚移植が主流です。凍結融解胚移植での使用成績をご紹介いたします。

≪ポイント≫

水溶性プロゲステロン皮下注射50mg/dayであれば、油性プロゲステロン筋肉注射50mg/dayと凍結融解胚移植成績は同等です。

≪論文紹介≫

Fazilet K Boynukalin, et al. F S Rep. 2022 Nov 11;4(2):165-172.  doi: 10.1016/j.xfre.2022.11.002.

ホルモン補充周期における凍結融解胚移植において、水溶性プロゲステロン皮下注射製剤と油性プロゲステロン筋肉注射の妊娠継続率を比較する前向き非ランダム化コホート研究です。
ホルモン補充周期における凍結融解胚移植224名をリクルートし、133名には水溶性プロゲステロン皮下注射、91名には油性プロゲステロン筋肉注射を投与しました。プロゲステロン製剤の選択は、患者の希望と通院のしやすさを考慮して決定しました。35歳以下の女性が対象としました。
結果:
患者背景は、両群間で同等でした。臨床的妊娠率(86/133[64.7%] vs. 57/91[62.6%])、流産率(21/86 [24.4%] vs. 10/ 57 [17.5%])、および妊娠継続率(65/133 [48.9%] vs. 47/91 [51.6%])は、水溶性プロゲステロン皮下注射群と油性プロゲステロン筋肉注射群で同等の成績でした。二項ロジスティック回帰分析により、胚盤胞形態が妊娠継続率と有意な関連を認め( 質の悪さ:aOR、0.11; 95%CI、0.029-0.4 27)、黄体ホルモン投与経路(皮下投与 vs. 筋肉内投与)は予後因子としては有意なものではありませんでした(sOR、0.694; 95%CI、0.354–1.358)。

≪私見≫

この研究では水溶性プロゲステロン皮下注射50mg/dayを採用しています。
P+0 16時に初回投与、その後 8時、20時の一日2回投与とし、P+5 15-18時に胚移植としています。新鮮胚移植の過去の研究に使用されている25mg/dayと異なり、50mg/dayを採用しているのは血中P濃度が25mg/dayだと足りないと判断しているからのようです。
今回の研究では、移植日の血清P濃度は水溶性プロゲステロン皮下注射群19.92 (15.19-27.23)ng/mL、油性プロゲステロン筋肉注射群21 (16.5-27.23)ng/mLとなっています。

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文責:川井清考(院長)

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