水溶性プロゲステロン皮下注射の新鮮胚移植成績

水溶性プロゲステロン皮下注射黄体補充における体外受精臨床成績についての報告は以下が主要なRCT報告です。共にプロゲステロン腟製剤との非劣性を証明しています。
① Lockwood G, et al. Fertil Steril. 2014;101:112–9.e3.
 採卵1回あたりの継続妊娠率
 水溶性プロゲステロン皮下注射25mg/day: 27.4%
 プロゲステロン腟ゲル90mg/day: 30.5%
② Baker VL, et al. Hum Reprod. 2014;29:2212–20.
 水溶性プロゲステロン皮下注射25mg/day: 41.6%
 プロゲステロン腟剤200mg/day: 44.4%

最近の報告がないかなと探したところ、ドイツからの報告をみつけましたのでご紹介いたします。

≪ポイント≫

新鮮胚移植において、水溶性プロゲステロン皮下注射はプロゲステロン腟製剤と同等の臨床成績効果がありそうです。

≪論文紹介≫

Marcel Schütt, et al. Clin Exp Reprod Med. 2021 Sep;48(3):262-267. doi: 10.5653/cerm.2020.04021.

体外受精実施195名273周期について、1日3回200mgのプロゲステロン腟剤または水溶性プロゲステロン皮下注射25mg/日による黄体補充による臨床成績を比較検討したレトロスペクティブコホート研究です。
結果:
患者背景は両群間で差がありませんでした。治療周期あたりの臨床的妊娠率は、皮下注射群(39.9%)と腟剤群(36.5%)に差は認められませんでした(p=0.630)。

≪私見≫

水溶性プロゲステロン皮下注射とプロゲステロン腟製剤が同等の効果なら、確かに侵襲度が低いプロゲステロン腟製剤が主流になるのは当然のような気がします。
では油性プロゲステロン製剤と比較してはどうかとなると、薬物動態学的および薬力学的試験では、水溶性製剤と油性製剤のROC曲線に差が見られなかった。水溶性製剤の方が最高濃度に達するまでの時間7倍短いという報告もあります。
M. Sator, et al. Gynecol Endocrino.l. 2013, 29, pp. 205-208

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文責:川井清考(院長)

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