水溶性プロゲステロン皮下注射の子宮内膜脱落膜化(Fertil Steril. 2013)
国内では油性プロゲステロン注射が2024年9月に移行期間も終了し使用することができなくなります。ただし、プロゲステロン腟剤が充実し安定供給されていることより、黄体補充は安定して行うことができるようになっています。
患者様のなかには一定数、プロゲステロン腟剤が使用できない患者様がいらっしゃいます。国内では販売されていませんが、海外では水溶性プロゲステロン皮下注射が販売されています。
水溶性プロゲステロン皮下注射の子宮内膜脱落膜化について、調べてみました。
≪ポイント≫
水溶性プロゲステロン皮下注射の子宮内膜脱落膜化は25mg/日で問題なさそうです。
≪論文紹介≫
Dominique de Ziegler, et al. Fertil Steril. 2013 Sep;100(3):860-6. doi: 10.1016/j.fertnstert.2013.05.029.
子宮内膜脱落膜化の誘導がプロゲステロン皮下注射で有効かどうかを調査した前向き、単盲検、ランダム化、並行パイロット試験です。月経周期 整である平均20歳前半、BMI 21前後のボランティア女性を対象としました。
GnRHアゴニストで偽閉経状態を準備し、経皮エストラジール製剤を14日間または21日間貼付しました。子宮内膜厚が7mm以上であることを確認した後、毎日25mgまたは50mgのプロゲステロン皮下注射に11日間無作為に割り付け、子宮内膜を採取しました。主要評価項目はプロゲステロン皮下注射11日目の子宮内膜脱落膜化としました。
結果:
24名のうち、22名が組織を提供しました。子宮内膜脱落膜化は全症例でおこっており、両群で差がありませんでした。
≪私見≫
水溶性プロゲステロン皮下注射25mg/日では、皮下注射後24時間後の血清プロゲステロン値は平均(標準偏差)5.77 (1.17)ng/mL(←投与前1.42 (0.37)ng/mL)、50mg/日では9.69 (2.60)ng/mL(←投与前1.39 (0.52)ng/mL)となっています。プロゲステロン腟剤の上昇率より乏しい印象をうけます。これらも普及していない理由の一つなんでしょうか。
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文責:川井清考(院長)
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