高齢女性に対するE2前処置アンタゴニスト法(Hum Reprod. 2024)

高齢女性では、卵巣刺激により回収卵子数を予測する目安となる胞状卵胞数(AFC)数は減少し、卵巣刺激開始時の卵胞の大きさはより不均一になる傾向があります。エストラジオール前処置を行い、FSHの上昇を抑え、卵胞サイズの不均一さをなくして刺激を行うというE2前処置が慣習的におこなわれてきました。ただし、一般対象患者においては生殖医療結果の向上との関係は否定されています。
卵子数が減る、月経周期が短くなる、月経中の卵胞サイズが不均一になる高齢女性を対象としてE2前処置を検討した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

38-42歳の女性において、黄体期から前処置としてE2剤を使用したアンタゴニスト周期を実施しても、前処置を行わない場合と比較して、同様の採卵数にとどまりました。

≪論文紹介≫

Isabelle Cédrin-Durnerin, et al. Hum Reprod. 2024 Jul 15:deae167. doi: 10.1093/humrep/deae167.

高齢女性において、黄体期エストラジオール(E2)前処置は、前処置なしと比較して生殖医療結果に良好な結果をもたらすかどうかを調査することを目的としました。
2016年から2022年に体外受精治療を受けている38~42歳の女性324名を対象に行った多施設共同非盲検ランダム化比較非劣性試験です。主要評価項目は回収卵子数、副次評価項目はrFSHの投与期間と総投与量、採卵キャンセル率、回収卵子率、成熟卵子数と胚数、新鮮移植の着床率、累積出生率としました。
対象者は月経周期 整で体重50kg以上、BMI 32未満の体外受精1-2周期目の女性をリクルートしました。無作為化に従って、エストラジオール4mg/dayを月経20-24日目に開始し、月経開始後の水曜日まで継続した後、金曜日にコリホリトロピンアルファを投与開始しfixed GnRHアンタゴニスト法を実施しました。
結果:
E2前処置群(164周期)と非前処置群(160周期)に無作為に割り付けられた患者(ITT group)において、患者背景は同じでした。291周期の患者が治療を開始し(PP group)、E2前処置群は147周期、前処置期間の平均[SD]は9.8[2.6]日、非前処置群は144周期でした。高齢であったにも関わらず、卵子採取数は両群とも0~29個であり、平均AMH値が1.2ng/ml以上であったため、中央値は6個でした。E2前処置群の非劣性が証明され、PP groupにおける平均差は-0.1回収卵子数 95% CI [-1.5; 1.3] P = 0.004、ITT groupにおける平均差は-0.44回収卵子数 95% CI [-1.84; 0.97] P = 0.014でした。
採卵を実施した周期において、刺激期間はE2前処置群で長く(11.7 [1.7] 日 vs. 10.8 [1.8] 日、P < 0.001)、コリホリトロピンアルファに追加するFSH投与量は、E2前処置周期の方が非前処置周期よりも多くなりました(1040 [548] IU vs 778 [504] IU、P < 0.001)。E2前処置群と非前処置群では、回収卵子数(8.4[6.1] vs. 9.1[6.0])、成熟卵子数(7[5.5] vs. 7.3[5.2])、胚数(5[4.6] vs. 5.2[4.2])に差は認められませんでした。新鮮胚移植後の着床率(16.2% vs. 18.5%)および患者あたりの累積出生率(17.7% vs. 22.9%)も同程度でした。PP groupで、患者の31.6%がPoseidon group4の基準(AMH<1.2ng/mlおよび/またはAFC<5)を満たしていました。このサブグループでは、E2前処置群では非前処置群と比較して高い回収卵子数が観察されました(5.1 [3.8] vs. 3.4 [2.7]、平均差 +1.7卵子[0.2; 3.2] P = 0.022)が、患者あたりの累積出生率には差は認められませんでした(15.7% vs. 7.3%)。

≪私見≫

卵巣反応不良群でのE2前処置が効果的という報告は他にもあります。
・Chang X, et al. Gynecol Endocrinol 2013; 29:196–200.
卵巣反応不良患者に対するE2前処置が、回収卵子数および成熟卵子数は多く、キャンセル数が少ないという7件を対象としたメタアナリシス(E2前処置群 450周期、標準群 606周期)
・Sefrioui O, et al. Gynecol Endocrinol 2019; 35:1067–1071.
卵巣反応不良群 148周期にてE2前処置ではキャンセル率が有意に減少し(3% vs.14%)、臨床転帰が有意に改善しました(移植あたりの臨床妊娠率と生児出生率: 47%および44% vs.12%および11%、凍結胚率 11% vs. 2%)。

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文責:川井清考(院長)

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