PCOSなのにAMH超低値(F S Rep. 2024)

卵巣予備能マーカー(AMH)が非常に低値で超音波上での胞状卵胞数と一致しないことが稀にあります。通常は長期間ピルを内服していたり、視床下部・下垂体抑制に伴う低下が多いのですが、今回はPCOSだけれども遺伝子変異によりAMHだけ低値となっていた症例報告をご紹介させていただきます。

≪ポイント≫

PCOSを疑うが、AMHだけが低値の場合、AMH遺伝子変異の可能性もあるため、解釈について注意を要する必要があります。

≪論文紹介≫

Laura Melado, et al. F S Rep. 2024 Feb 2;5(2):152-156. doi: 10.1016/j.xfre.2024.01.006.

AMH値、AFC、FSH値の卵巣予備能パラメータに相違を認めた症例報告をご紹介します。
33歳の女性、4経妊4経産、BMI 25.33、AFC 40個、さまざまな検出方法の検査でAMH低値[ 0.07ng/mL(Beckman Coulter)、0.084ng/mL(Roche)など]を認めました。排卵障害(3-4ヶ月に一度の月経)、PCOM(片方の卵巣に20個の胞状卵胞)、LH高値を認めており、PCOSを疑いました。なおアンドロゲン値は正常でした。
次世代シークエンシングによる全エクソームシークエンシングによるミスセンス変異の診断、インヒビンB測定を行いました。
結果:
AMH遺伝子のエクソン1における新規のホモ接合性ミスセンス変異体[NM_000479.4:c259G > A, p.(Val87Met)]変異を検出しました。
インヒビンBは165.5pg/mLと多嚢胞卵巣を示す所見でした。
2回HMGアンタゴニスト法で採卵を行い、初回は4個の正常核型胚盤胞、2回目は26個の卵子凍結を行いました。卵巣刺激に対する反応や血清エストラジオール値の上昇は通常と変わりませんでした。
今回報告されたAMH遺伝子変異は、卵巣刺激に対する卵巣反応に影響を与えることなく、血清AMH低値のみに関連し、AFC、FSH、インヒビンBのような他の卵巣予備能マーカーと不一致になる可能性があります。

≪私見≫

通常は、AMH非存在下では、より多くの原始卵胞がどんどん発育卵胞としてリクルートされ、その結果、卵巣の原始卵胞の枯渇が著しく早まることが動物実験でもわかっており、AMHまたはAMHR2のどちらかに機能障害をもつホモ接合性の変異対立遺伝子を持つ女性は、早発閉経になるリスクが否定できません。
ただ、当症例のようにAMH機能はあるが、検査のみ超低値となるパターンもあるということを認識できました。

話はかわりますが、経妊経産の略語は久しぶりに整理してみました。

略語 英語表記 日本語訳
G Gravida 妊娠回数
P Para 出産回数
A Abortus 流産(自然・人工の両方を含む)
SA Spontaneous Abortion 自然流産
IA Induced Abortion 人工妊娠中絶
E Ectopic 異所性妊娠
L Living 生存している子供の数
SB Stillbirth 死産(妊娠20週以降)
NND Neonatal Death 新生児死亡(生後28日以内)

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#亀田IVFクリニック幕張

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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