GnRHアンタゴニストflexible法を用いた新鮮胚移植成績向上の取り組み(Hum Reprod. 2024)

GnRHアンタゴニスト法はfixed法であれflexible法であれ、成績に大差がないとされています。PPOS法とGnRHアンタゴニスト法の大きな差別化は新鮮胚移植ができるかどうかです。新鮮胚移植の成績を、flexible法を用いてアンタゴニスト投与日からの微修正(アンタゴニスト投与期間を減らすこと、Gn一日投与量を減らすこと)で改善できないかどうかを調査したランダム化比較試験がでてきたのでご紹介いたします。

≪ポイント≫

GnRHアンタゴニスト法のアンタゴニスト投与日からの修正は新鮮胚移植の生児出生率に影響を与えることがわかりました。

≪論文紹介≫

Bei Xu, et al. Hum Reprod. 2024 Jun 28:deae145. doi: 10.1093/humrep/deae145.

2021年11月から2022年8月にかけてランダム化比較試験です。546名の患者が1:1の割合で従来のGnRHアンタゴニスト法と修正GnRHアンタゴニスト法に割り付けられました。初回体外受精患者であり、女性年齢<40歳、月経周期整、BMI 18.5-30、AFC>5、AMH>1.1ng/ml、基礎FSH値<10IU/mlとしています。PCOS患者や子宮因子の明確な患者、極度の男性不妊患者は除外されています。
主要評価項目は新鮮胚移植周期あたりの生児出生率とし、副次評価項目は、着床率、臨床的妊娠率、妊娠継続率、流産率、OHSS発症率としました。
結果:
患者背景は2群間で差はありませんでした。intention-to-treat(ITT)集団において、修正GnRHアンタゴニスト法群の生児出生率は従来群よりも高くなりました(38.1%[104/273] vs. 27.5%[75/273]、RR 1.39[95%CI、1.09-1.77]、P = 0.008)。胚移植を受けた患者でみたper-protocol(PP)解析でも、修正GnRHアンタゴニスト法群の生児出生率は従来群よりも高くなりました(48.6%[103/212] vs. 36.8%[74/201]、RR 1.32[95%CI、1.05-1.66]、P = 0.016)。修正GnRHアンタゴニスト法群は、ITT解析およびPP解析のいずれにおいても、従来群よりも高い着床率、臨床的妊娠率および妊娠継続率を認めました(P < 0.05)。両群間で、回収卵子数、成熟卵子数、2PN率、胚数、胚盤胞到達率および良質胚率、流産率、OHSS発生率に有意差は認められませんでした(P > 0.05)。
卵巣刺激はGonal-F 150-225IU/日投与開始。(i)13mm以上の卵胞が少なくとも1つ存在すること;(ii)E2レベルが600pg/ml以上であること;(iii)血清LHレベルが10IU/l以上であること を条件にCetrorelixを投与。主席卵胞が平均直径16~18mmに達した時点でrhCGにてトリガーし、36-38時間で採卵をおこないました。従来群はGn投与量を変えずトリガー当日までCetrorelix投与。修正群ではCetrorelix投与開始とともにGn投与量を30-50%減量し、トリガー当日は、Cetrorelix投与は行いませんでした。

≪私見≫

GnRHアンタゴニスト法は、保険適用になってからflexible法よりfixed法を行う施設がふえましたが、新鮮胚移植成績をイメージした薬剤減量によるflexible法とても面白い着目点だなと思いました。今回の結果から言えることは、今回の研究の臨床成績の改善は明らかに内膜による影響です。高いE2の抑制か、採卵決定時のP4改善か、早期アンタゴニスト投与の中止か、どれが主原因なのでしょうか。当院での採卵決定時には、アンタゴニスト製剤は投与していないためGn量の調整を検討する症例をトライしてみようかと思いました。
また、今回記載されていて勉強になったこととして、GnRHアンタゴニスト製剤は、GnRHレセプターに対して天然GnRHの20倍、ブセレリンのようなGnRHaの2倍の親和性があるということです。GnRHアンタゴニスト製剤が有効濃度から外れないと、点鼻トリガーは効かないわけですよね。
Reissmann T, et al. Hum Reprod Update 2000;6:322–331.

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文責:川井清考(院長)

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