動画で見る顕微授精の流れ⑥受精確認_変性
今回は新しい試みとして動画で一つの技術の一連の流れを動画で紹介しています。
今回紹介したい技術は卵子の中に精子を一つ入れて受精を促す顕微授精です。
顕微授精の一連の流れは以下の通りです。
① 卵子を探して培養液で洗浄
② 卵子の回りを取り囲んでいる卵丘細胞を取り外して成熟判定
③ 精子の探索と不動化
④ 卵子の紡錘糸観察
⑤ 卵子への精子注入
⑥ 受精確認
今回は、
⑥ 受精確認
になります。
卵子の中に精子を注入してから、約17時間後に卵子の反応を調べます。卵子の反応は以下の通りになります。
① 変性(生命活動停止)
② 2PN(正常受精)
③ 0PN(受精反応なし、あるいは、受精反応しかけ)
④ 1PN(異常受精)
⑤ 3PN(異常受精)
一つずつ説明をしていきたいと思います。
今回は、
① 変性(生命活動停止)
になります。
これは患者さんにとっても培養士にとっても一番辛い結果になります。精子を卵子の中に入れるために開けた穴が塞がらずに卵子の中身が外に漏れ出てしまい、卵子の生命活動は完全にストップしてしまいます。変性となってしまった卵子が赤ちゃんになる可能性は完全になくなります。
今回は一連の流れを動画で紹介する試みですが、卵子が変性する様子を動画で紹介するのはあまりにも辛いので、今回はアニメーションに致します。
変性をしてしまうときは、精子を注入するために穴を空けた卵子の3時方向の膜が膨れてきます。それに伴って卵子全体も膨らんできます。そして徐々に卵子の3時方向から膜の輪郭が見えなくなってきます。最終的に膜の輪郭は全面的に見えなくなってしまい、やがて、卵子本体は萎んでいきます。
顕微授精により卵子が変性してしまう割合は顕微授精を行った卵子全体の2-3%です。変性が起こる原因は分かりません。卵子の質があまり良くない場合、卵子自体の成熟度に問題がある場合などが考えられますが、特定するのは困難です。顕微授精の技術不足が原因となり得る場合ももちろん考えられます。したがって、我々培養士は技術要因による変性を1個でも減らすべく、日々、技術の見直し・改善を行っています。理想はもちろん変性ゼロです。
次回は受精確認の中で、患者さんにとって最高の結果であり、また、我々培養士が一番目指さなければならない、
➁ 2PN(正常受精)
について説明致します。
文責:平岡謙一郎(培養室長)
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