赤ちゃんが小さい時には安静が効果的?(Am J Obstet Gynecol. 2024)

現在までのところ、胎児発育改善における母体安静は効果がないとされていました。107名の患者を評価した1987年にLaurinとPerssonが報告した報告が基となっており、2020年のCochrane Libraryでも、SMFM(米国母体胎児医学会)、FIGO(国際婦人科・産科連合)でも胎児発育改善における母体安静は推奨しないとされています。
ただ、症例数が小さいこと、かなり前の報告であることから、再検証を行った報告となります。

≪ポイント≫

胎児が推定体重より小さい時に、左側臥位を中心とした安静は効果的かもしれません。

≪論文紹介≫

Greggory R DeVore, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 May 17:S0002-9378(24)00530-1. doi: 10.1016/j.ajog.2024.04.024.

母親の安静が、週数と比して小さい胎児(SGA児:<10th percentile)を2週間おこなったとき、胎児成長に影響を与えるかどうか調査したレトロスペクティブ研究です。
母親には左側臥位で安静にしてもらいました。起きている時は出来る限り左側臥位としましたが、完全のベッド上安静ではなく、一時間おきに起き上がり5-10分 身の回りのことをしたりストレッチをしたりをしてもらいました。胎児生体計測は診断の2週間後に行われた。この研究に参加する前のすべての胎児は、SGA児(<10th percentile)と診断を受けていました。安静後の評価をするために、胎児パラメータ(推定胎児体重、頭囲、腹囲、大腿骨長)の変化を2つの期間について計算した:(1)推定体重が10パーセンタイル未満と診断される前と10パーセンタイル未満と診断された時、(2)体重が10パーセンタイル未満と診断された時と安静2週間後。また、安静なしで過ごしたコントロール群と含めて比較検討も行いました。
結果:
265名の胎児を観察しました。
(1)2週間安静後、265名中199名(75%)の胎児の体重が10パーセンタイル以上となりました。
(2)2週間安静後、胎児の体重パーセンタイルの中央値は6.8(四分位範囲4.4-8.4)から18.0(四分位範囲9.5-29.5)に増加しました。
(3)頭囲、腹囲、大腿骨長についても同様の傾向が認められました。
安静を求められなかった患者群では、安静群(199/265[75%])と比較して、追跡検査時に体重が10パーセンタイル以上になったのはテキサス・ミシガン群では7/37(19%)、コロラド群では13/111(12%)のみでした(P<.001)。

≪私見≫

ガイドラインに書かれている中々再検証しづらいことをrevisitすることの大切さ、改めて感じさせられます。妊娠初期の性器出血などの切迫流産には安静は無効と現在のところされていますが、改めて考え直してもいいのかもしれません。
この検討では、左側臥位を推奨しています。妊娠中に仰臥位になると 下大静脈が圧排されるためとされています。30度以上の左側臥位は母体子宮血流増加や母体心拍出量の増加につながるようです。

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文責:川井清考(院長)

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