国内不育症患者の周産期予後(Am J Reprod Immunol. 2019)

反復流産女性では早産、前期破水、低出生体重児のリスクが高いことが報告されています。日本の環境省が実施するエコチル調査(全国規模の出生コホート研究であるJapan Environment and Children's Study(JECS))の結果を用いて国内の不育症患者の周産期予後を調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

3回以上の流産既往女性では、妊娠後20週以降の死産、流産、胎盤癒着、妊娠高血圧症候群、子宮内感染症、帝王切開リスクが高いことがわかりました。

≪論文紹介≫

Mayumi Sugiura-Ogasawara, et al. Am J Reprod Immunol. 2019 Jan;81(1):e13072. doi: 10.1111/aji.13072.

環境省により「日本環境と子ども調査(JECS)」として知られる全国規模の出生コホート研究が実施されました。対象は、登録された104,102人の妊娠・出産から多胎妊娠や人工妊娠中絶を除いた96,212名(妊婦平均年齢 30.7±5.1歳)としました。
結果:
先天異常、異数性、新生児仮死、低出生体重児のリスク増加は、反復流産既往女性からは観察されませんでした。胎盤癒着と子宮内感染症のリスク増加が認められました。
3回以上の流産既往女性における多重代入法(Multiple-imputed analyses)を用いたaORは、20週以降の死産1.76(95%CI、1.04-2.96)、流産1.68(1.12-2.52)、胎盤癒着2.53(1.17-5.47)、中等度HDP 1.87(1.37-2. 55)および重症HDP 1.60(0.99-2.57)、子宮内感染症1.94(1.06-3.55)、帝王切開 1.28(1.11-1.47)、男児出産 0.86(0.76-0.98)でした。

≪私見≫

不育症患者は妊娠に至った後も周産期リスク上昇があることが考えられるため高次医療機関での周産期管理が好ましいかもしれません。

ちなみにですが、死産の基準は国際間でも異なります。
ESHRE (ヨーロッパ): 24週以降
ASRM (アメリカ): 20週以降
RCOG (イギリス): 24週以降
韓国: 24週以降
中国: 28週以降
WHO (World Health Organization): 28週以降
インド: 28週以降
日本: 22週以降(法的には12週以降)

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文責:川井清考(院長)

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