ヨーロッパ生殖医学会で演題採択(その①)

体外受精に関する学会は日本国内外問わず多くの国と地域で開催されています。海外で開催される有名な学会の1つに毎年7月に開催されるヨーロッパ生殖医学会(European Society of Human Reproduction and Embryology; ESHRE)があります。日本国内で開催される多くの学会は演題を登録すれば基本的に全て採択されますが、ESHREでの演題採択率は約50-60%なので、ESHREで演題が採択されることは目標であり、また、仕事がある程度海外に認められた証ともなります。今年は培養室からESHREに2演題を登録し、幸運にも2演題共採択されました。今年の開催地はデンマークのコペンハーゲンでした。通常なら現地に赴くところでしたが、新型コロナウィルスの影響で今年はウェブ上での開催となりました。残念ですが、今年はポスターを提出して日本からWebでの参加となります。

今回採択された2演題中1演題は顕微授精方法の違いが受精成績および出産に及ぼす影響を調べたものです。今回比較した2つの顕微授精方法は「従来法」と「ピエゾ法」です。それぞれの方法の詳細は過去のブログ記事を御参照ください。
・「従来法」→https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_51.html
・「ピエゾ法」→https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_52.html
以前より「従来法」と「ピエゾ法」の受精成績を比較した論文は何報か報告されていますが(https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_53.html)、出産成績に及ぼす影響を調べたものは殆どありません。そこで今回我々は「従来法」と「ピエゾ法」により出産した赤ちゃんの出産成績を比較しました。その結果、顕微授精後の卵子生存率、正常受精率、胚発育および胚移植後の妊娠率は「従来法」に比べて「ピエゾ法」が有意に高い値を示しました。しかし出産児の先天異常率の比較において差は認められませんでした。これらの結果が示すところは「ピエゾ法」は「従来法」に比べて受精成績を改善するものの、先天異常の割合は増えないことから、顕微授精において「ピエゾ法」は有効ということです。

次回は残り1演題の内容報告をさせて頂きます。

文責:平岡(培養室長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。