ビタミンDについて(当院のデータをふまえて)

ビタミンDは数多くの不妊クリニックで測定される検査となりました。ビタミンDは骨をつくるビタミンとして認知されてきましたが、最近では、抗がん作用や免疫抑制作用なども知られるようになってきました。ビタミンDには、ビタミンD2(椎茸などの植物に含まれる)とビタミンD3(サケや魚の肝臓などに含まれる)があります。これらは単独では活性をもちませんが血中のビタミンD結合タンパクに結合し肝臓に運ばれ25(OH)Dに変換されます。さらに1,25(OH)2D3に変換され受容体に結合することで作用します。 25(OH)Dは半減期が約15日と長いため、ビタミンDの指標として血中25(OH)D濃度を測定します。日本内分泌学会の判定指針では、血中25(OH)D濃度が<20ng/mlをビタミンD「不足」、21-29ng/mlを「不十分」、30ng/ml以上を「十分」量と定義しています。 ビタミンD濃度と体外受精の成績に関する11論文2700名の女性のメタアナリシスをJ Chuらが2018年に報告しており、「不足」「不十分」の女性に比べて「十分」な女性は臨床妊娠率がオッズ比1.46倍[1.05-2.02]、出産率がオッズ比1.34倍[1.04-1.73]と高い妊娠率・出産率を認めています。(この論文では流産率に差は認めていません。)また、DR Goncalvesらが2018年に報告した11論文のレビューでは反復着床不全とビタミンD「不足」「不十分」の関連を認めています。卵子の質との関連なども含めて不妊症とビタミンDに関連する論文は年々増加しています。今後の報告などにも注目してみていきたいとおもいます。 Hum Reprod. 2018, DOI: 10.1093/humrep/dex326 Am J Reprod Immunol. 2018, DOI: 10.1111/aji.13022

亀田IVFクリニック幕張では体外受精前には患者さまに説明の上、血中25(OH)D濃度を測定しています。当院509名のデータでは血中25(OH)D濃度「不足:<20ng/ml」が61.3%、「不十分:21-29ng/ml」が28.9%と大半をしめ、「十分: 30ng/ml以上」が9.8%にすぎませんでした。また、「十分」であった女性は既にサプリメントを摂取されていらっしゃる方がほとんどでした。これらのことから最近ではサプリメントの内服を質問された場合、葉酸は必須としてビタミンDサプリメント1,000IU(25μg)/日を積極的に摂取するようにすすめています。 

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。