妊娠中の非燃焼・加熱式タバコ・電子タバコについて

以前と異なり非燃焼・加熱式タバコ・電子タバコを使用される方が増えてきているようです。妊娠中の喫煙は妊娠・出産、児の健康に悪影響を及ぼす可能性があるのみならず、受動喫煙での影響が報告されており、カップルでの禁煙が好ましいとされています。非燃焼・加熱式タバコ・電子タバコは病気や死亡リスクとの関連性はまだ明らかとされておりませんが、非燃焼・加熱式タバコは燃焼式とほとんどリスクが変わらないとされているようです。電子タバコは、ニコチンを気化させて吸入する電池式のデバイスです。安全性を売りにしておりニコチンゼロ・タールゼロのフレーバータイプも販売されており、人気が高まっています。しかし、電子タバコの液体には、食品や化粧品などにも使われるプロピレン・グリコール、植物性グリセリン・ベジタブルグリセリンや香料が含まれています。比較的、健康への癌化などの危険度は低いとされていても生殖との関連性や妊娠への影響はまだまだ不明な点が多いとされています。そういう状況もあり私たち産婦人科医師の意識と知識は不足していることが指摘されています。アメリカでは2020年現在、不燃性のタバコ製品の使用のスクリーニングは50%未満でしか実施されておらず、産婦人科医の10%以上が電子タバコは生殖健康に悪影響を及ぼさないと考えています。電子タバコの胎児、母体への有害な影響についての継続的な研究を継続するとともに現段階では妊娠中は受動喫煙もふくめて控えていただくことをおすすめしています。
参考文献:
Fertil Steril. 2020 DOI: 10.1016/j.fertnstert.2020.01.031

産婦人科ガイドライン2020産科編 「妊婦の喫煙(受動喫煙を含む)については?」のアンサーは以下のとおり。

  1. 妊娠初期に、喫煙の有無・周囲の喫煙環境について情報を得る。(推奨度B)
  2. 妊娠はよい禁煙動機であり、妊婦およびパートナーの喫煙による悪影響を説明して初期から禁煙を勧める。(推奨度B)
  3. 喫煙者(受動喫煙も含む)には、一般に喫煙および受動喫煙について「ヒトの健康、妊娠予後、胎児の成長、小児の成長・健康などにさまざまな悪影響を及ぼす」という内容を説明する。(推奨度B)
  4. 受動喫煙を避けるように指導する。(推奨度C)
  5. 喫煙者(受動喫煙も含む)には、非燃焼・加熱式タバコ、電子タバコでも、健康に悪影響をもたらす可能性があることを伝える。(推奨度C)

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。