PCOS女性のAMH値は排卵しやすさと関係するか(Fertil Steril. 2024)

国内のPCOS診断基準が2024年改訂されました。そのなかに超音波の多嚢胞の代替マーカーとして血清AMH値が加わりました。血清AMH値がクロミフェン・メトホルミンを用いた卵巣刺激による排卵確率と関係するかどうかを調査したランダム化比較試験の二次解析をご紹介いたします。

≪ポイント≫

クロミフェン・メトホルミンを用いた卵巣刺激はPCOS女性のAMH値が高いほど反応不良であることがわかりました。

≪論文紹介≫

Allison S Komorowski, et al. Fertil Steril. 2024 Apr;121(4):660-668. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.12.031.

Pregnancy in Polycystic Ovary Syndrome I(PPCOS I)試験の二重盲検ランダム化試験に参加したPCOSに起因する無排卵不妊女性で、ベースラインの臨床検査で得られた血清検体が、更なる血清分析に利用可能であった計333名を対象としました。3つの治療群(CC、メトホルミン、CC+メトホルミン)それぞれにおけるベースラインAMH値と排卵、妊娠、出生率との関連を評価しました。
結果:
322名のAMH値は平均11.7±8.3ng/mL(範囲0.1-43.0ng/mL)でした。AMH値が1単位(1ng/mL)増加するごとに、排卵オッズは10%減少しました(OR 0.90;95%CI、0.86-0.93);治療群により排卵率に差はありませんでした。AMH値が高い(>8ng/mL)女性は、AMH値<4ng/mLの女性と比較して、排卵する可能性が低くなりました(OR、0.23;95%CI、0.05-0.68)。年齢、BMI、期間、インスリン抵抗性を含む交絡因子でコントロールしても、結果は変わりませんでした。AMH値が非常に高くても排卵は起こり、排卵が起こらない最大値は認められませんでした。交絡因子をコントロールした場合、AMH値は妊娠率および生児出生率とは関連していませんでした。

≪私見≫

このランダム化比較試験の患者背景として若年、肥満、多毛を認めた対象者が多くいます。少し国内のPCOS女性層と背景が異なる印象を受けます。
上限を 8ng/mLで設定されているのは過去の文献でクロミフェンの反応不良のカットオフと示された報告があるからです。(Xi W, et al. J Ovarian Res. 2016; 9: 3)
今後、患者様に説明する一つの参考にしたいなと思っています。

#排卵障害
#PCOS
#AMH
#クロミフェン
#亀田IVFクリニック幕張

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張