卵巣刺激時のLH値は新鮮胚移植成績に影響する(Front Endocrinol. 2021)
黄体形成ホルモン(LH)は卵胞発育、排卵、ステロイド形成において中心的な役割を果たすだけでなく、胚着床や黄体機能にも影響を及ぼします。
新鮮胚移植成績に卵巣刺激時のLH値が影響を与えるかどうかを調査した報告です。
≪ポイント≫
新鮮胚移植をするかフリーズオール戦略にするか迷った時には血清P値だけではなく、血清LH値も参考になるかもしれません。
≪論文紹介≫
Yiyang Luo, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2021 Apr 23:12:640047. doi: 10.3389/fendo.2021.640047.
胚移植周期(新鮮胚またはフリーズオール後の初回凍結融解移植)成績もしくは採卵あたりの成績と、血清LH値との関連を検討したレトロスペクティブコホート研究です。
GnRHアンタゴニストプロトコルを実施した1,480名の体外受精実施女性を対象とし、卵巣刺激中の血清LHピーク値が4IU/L未満(A群)と4IU/L以上(B群)であった症例を低LH群と高LH群に層別化しました。新鮮胚移植をおこなった群とフリーズオール戦略を取った群とでサブグループ解析をおこないました。主要評価項目は初回胚移植後の生児出生率および1周期あたりの累積生児出生率としました。副次評価項目は初期良好胚数、有効胚数、および初回胚移植後のその他の妊娠転帰としました。
結果:
全コホートにおいて、累積生児出生率はLH低値群(63.1% vs. 68.3%、P=.034)でLH高値群と比較して低下しました。サブグループ解析の結果、LH低値群では新鮮胚移植後の生児出生率は低下(38.0% vs. 51.5%、 P=.005)していましたが、フリーズオール戦略後の最初の凍結融解胚移植後の生児出生率は同程度(49.8% vs. 51.8%、P=.517)でした。LH低値群は、新鮮胚移植→凍結融解胚移植周期の累積生児出生率は低くなりましたが(54.8% vs. 66.1%、P=.015)、フリーズオール戦略後の累積生児出生率はLH高値群と同等でした(66.8% vs. 69.2%、P=.414)。交絡因子調整後、多変量回帰分析によると、コホート全体(OR:0.756、95%CI:0.604-0.965、P=.014)および新鮮胚移植→凍結融解胚移植周期群(OR:0.596、95%CI:0.408-0.917、P=.017)において、LH低値は累積生児出生率の独立したリスク因子でした。さらに、LH低値が生児出生率に及ぼす悪影響は、新鮮移植後(OR:0.532、95%CI:0.353-0.800、P=.002)には以前と認められましたが、フリーズオール戦略の初回凍結融解胚移植後(OR:0.918、95%CI:0.711-1.183、P=.508)には認められませんでした。
≪私見≫
この報告ではP 1.5ng/mL以上となった症例は移植されていません。患者層は31歳前後で排卵障害がない女性です。サブグループ解析では、新鮮胚移植では臨床妊娠率、流産率、生児出生率ともに差がついており、統計的に差がつかないものの着床率、生化学妊娠率も同じ傾向となっています。
卵子の質とは考えにくく、内膜への影響もしくは黄体形成・維持どちらかに影響を与えているのだと思います。
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文責:川井清考(院長)
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