排卵周期凍結融解胚移植当日におけるプロゲステロン値の影響(Hum Reprod. 2020)
黄体補充を行わない修正排卵周期凍結融解胚盤胞移植当日の血清プロゲステロン値が、どの程度生殖医療成績に影響を与えるかどうかはわかっていません。
低いと生殖成績に影響を与えそうというスタンスの報告をご紹介いたします。
≪ポイント≫
排卵周期凍結融解胚移植当日におけるプロゲステロン値は低すぎない方がよさそうです。
≪論文紹介≫
Sofia Gaggiotti-Marre, et al. Hum Reprod. 2020 Jul 1;35(7):1623-1629. doi: 10.1093/humrep/deaa092.
2016年1月から2019年1月に294症例の凍結胚盤胞移植をレトロスペクティブコホート研究です。胚移植前日8時から11時に血清プロゲステロン測定を受けた患者のみを対象としました。胚移植前日の血清プロゲステロン値が10ng/ml未満または10ng/ml以上の2群に分け、生殖医療成績を比較検討しました。
結果:
胚移植前日の平均血清プロゲステロン値は、妊娠成立した女性がしない女性に比べて高くなりました(14.5±7.0 vs. 12.0±6.6 ng/ml、95%CI [0.83; 4.12])。全体の臨床的妊娠率は42.9%、出生率は35.4%であった。血清プロゲステロン値が高い群(>10ng/ml)では、出生率(41.1% vs. 25.7%:RD 15.4%、95%CI[5;26])および臨床的妊娠率(48.6% vs. 33.0%:RD15.6%、95%CI[4;27])が高くなりました。移植前日の血清プロゲステロン値が高い患者(患者の63%)では、出生率が高くなりました(オッズ比:1.05;95%CI[1.02;1.09])。移植前日の血清プロゲステロン値が低い患者(患者の37%)は、体重(62.5±9.9 vs 58.1±7.1 kg、95%CI [1.92; 6.90])およびBMI(22.9±3.6 vs 21.6±2.7 kg/m2、95%CI [0.42; 2.25])が高くなっていました。
≪私見≫
この研究は38歳前後、BMI22前後の女性を対象としています。
黄体補充を行わない修正排卵周期凍結融解胚盤胞移植のプロトコールは尿中LHが陽性となった6日目に胚移植となっています。昨日ご紹介した報告(排卵周期凍結融解胚移植当日におけるプロゲステロン値の影響(Reprod Biomed Online 2024))より移植日の揺らぎはなさそうです。
両方の報告に共通していることはBMIが高いと移植日当日の血清プロゲステロン値が低くなることです。これだけは間違いなさそうですね。
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文責:川井清考(院長)
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