排卵周期凍結融解胚移植当日におけるプロゲステロン値の影響(Reprod Biomed Online 2024)

黄体補充を行わない修正排卵周期凍結融解胚盤胞移植当日の血清プロゲステロン値が、どの程度生殖医療成績に影響を与えるかどうかはわかっていません。
あまり影響がないというスタンスの報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

排卵周期凍結融解胚移植当日におけるプロゲステロン値が9.1ng/mL未満でも成績に大きく影響を与えなさそうです。

≪論文紹介≫

M. Saupstad,et al. Reprod Biomed Online 2024 doi: 10.1016/j.rbmo.2024.103862

黄体補充を行わない修正排卵周期凍結融解胚盤胞移植当日の血清プロゲステロン値は臨床的妊娠率と関連するかどうかを比較したランダム化比較試験のサブスタディです。2019年1月から2022年10月にかけて209名のデータを収集しました。
胚盤胞移植当日の血清プロゲステロン値と臨床的妊娠率、着床率(4w0-1dにhCG 5 IU/L以上)、初期流産率との関連を、25パーセンタイルと10パーセンタイルをカットオフ値として、プロゲステロン値が低い群と高い群との間で検討しました。潜在的交絡因子を調整するために多変量ロジスティック回帰分析を行いました。
黄体補充を行わない修正排卵周期凍結融解胚盤胞移植のプロトコールは、卵胞径17mm以上となった当日の22時にrHCG250㎍を皮下注射し6-7日後の11-14時に胚移植を実施しています。移植胚のグレードは3BB以上としました。
結果:
黄体補充を行わない修正排卵周期凍結融解胚盤胞移植当日の血清プロゲステロン値は4.9~91.8nmol/Lであり、25パーセンタイルは29.0nmol/L(9.1ng/mL)、10パーセンタイルは22.5nmol/L(7.1ng/mL)であった。プロゲステロンの血清レベルは、臨床的妊娠の有無にかかわらず差がありませんでした(平均(SD):38.5(14.0)vs. 36.8(12.4)nmol/L、p=0.350)。臨床的妊娠率、着床率、初期流産率は、25パーセンタイルと10パーセンタイルをカットオフ値として、プロゲステロン値が低い群と高い群との間で検討しても同様の結果でした。多変量回帰分析では、プロゲステロン値と臨床的妊娠率の間に関連は認めませんでした。

≪私見≫

私の見解は基本、排卵周期凍結融解胚移植当日におけるプロゲステロン値は低すぎない方がいいと思っていますが、この報告をみても少し低くてもナーバスになりすぎなくて良さそうです。

この研究は32歳前後 BMI 23前後の女性を対象としています。
血清プロゲステロン値が29nmol/L(9.1ng/mL)未満の女性は、BMI高く、原因不明不妊に多く、トリガー後6日移植群に多くなりました。
トリガーからの胚盤胞移植日を調整しても傾向は変わらないとしていますが、症例数が増えるとどうなのでしょうか。

有意差はついていませんが、10パーセンタイルをカットオフ値の方が、数値としては着床率が低く出ていますね。
25パーセンタイルをカットオフ値29nmol/L(9.1ng/mL)の場合
 カットオフ未満 着床率 51% 臨床的妊娠率 35.3% 流産率 15.7%
 カットオフ以上 着床率 54.8% 臨床的妊娠率 37.3% 流産率 17.2%
10パーセンタイルをカットオフ値22.5nmol/L(7.1ng/mL)の場合
 カットオフ未満 着床率 47.4% 臨床的妊娠率 36.8% 流産率 10.5%
 カットオフ以上 着床率 54.5% 臨床的妊娠率 36.8% 流産率 17.5%

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文責:川井清考(院長)

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