月経8日目前後からの調節卵巣刺激の回収卵子数変化(Reprod Biomed Online 2024)

調節卵巣刺激は通常月経初期1-3日目から行うことが一般的です。最近では、妊孕性温存目的などの緊急を要する場合には黄体期から調節卵巣刺激を行うこともされており、卵巣刺激日数が通常刺激よりかかるものの、回収卵子数や胚質に影響を与えないことがわかっています。
では、月経8日目前後からの調節卵巣刺激(late follicular phase ovarian stimulation)は どうなのでしょうか。途中で主席卵胞を排卵させるためのLHサージが入ってしまうのが、通常卵巣刺激や黄体期開始卵巣刺激とは異なる点です。通常卵巣刺激とlate follicular phase ovarian stimulationの卵巣刺激特徴・回収卵子数を比較検討した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

若年卵子提供女性において、月経8日目前後からの調節卵巣刺激の回収卵子数は低下せず、GnRHアンタゴニスト使用量が少ない結果となりました。

≪論文紹介≫

Sylvie De Rijdt, et al. Reprod Biomed Online. 2024. doi:10.1016/j.rbmo.2024.103889

84名の卵子提供者を卵胞期早期開始群(一般群、n=41)と卵胞期後期開始群(後期開始群、n=43)に割り付けて、GnRHアンタゴニストプロトコルにおいて、後期開始群は一般群と回収卵子数が同等か調査したランダム化比較試験になります。評価項目は回収卵子数、成熟卵子数、ゴナドトロピン量とGnRHアンタゴニスト量、刺激コストとしました。
結果:
回収卵子数は一般群と後期開始群で差がありませんでした(intention-to-treat解析15.5±11.0個 vs. 14.0±10.7個、p=0.52、per-protocol解析18.2±9.7個 vs. 18.8±7.8個、p=0.62)。また、成熟卵子数でも差はありませんでした(14.1±8.1個 vs. 12.7±8.5個、p=0.48)。刺激期間は一般群で短くなりました(10.0±1.6日 vs. 10.9±1.5日、p=0.01)。rFSH量は一般群で少なくなりました(2240.7±313.9 IU vs. 2453.9±330.1 IU p=0.008)。一般群ではGnRHアンタゴニスト量が約6日間使用されたが、後期開始群ではGnRHアンタゴニスト薬が処方されたのは1名の患者のみでした(6.0±1.4日 vs. 0.13±0.7日 p<0.001)。

≪私見≫

卵胞後期スタートにおける卵巣刺激でも回収卵子数は大きく変化しないことがわかりましたが、胚発生が終えていないため今後の報告に期待したいところです。
late follicular phase ovarian stimulationは通常はなかなか行わないので、ホルモン動態を知っておく上では素晴らしい報告だと思っています。
この報告では通常卵巣刺激はfixed protocolです。またlate follicular phase ovarian stimulationは刺激8日目での診察となっています。FSH量はrFSH 225単位で固定されていて、患者背景は26歳前後、AMH 2.6ng/mL前後の卵子提供女性となっています。late follicular phase ovarian stimulationは血清E2値 172ng/Lで開始をしており、刺激8日目での血清P4値 5.3μg/Lとなっています。

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文責:川井清考(院長)

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