胚移植後の新型コロナウィルス感染による影響(Am J Obstet Gynecol. 2024)

胚移植後の新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)感染が、体外受精治療における早期妊娠転帰に及ぼす影響を調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

胚移植後の新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)感染は、交絡因子を補正した場合、着床率・臨床妊娠率・流産率に影響を与えませんでした。

≪論文紹介≫

Xue-Fei Li, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Apr;230(4):436.e1-436.e12. doi: 10.1016/j.ajog.2023.12.022.

体外受精患者において、胚移植後10週以内のSARS-CoV-2感染と早期妊娠転帰との関連を検討することを目的とした中国で行われた前向きコホート研究です。20~39歳、BMI 18~30の女性患者を2022年9月~2022年12月に登録し、2023年3月まで追跡しました。SARS-CoV-2感染時期(胚移植後14日以内、28日以内、10週以内)、症状、ワクチン接種状況、ワクチン接種から胚移植までの間隔、および生化学的妊娠率、着床率、臨床的妊娠率、早期流産率を含む早期妊娠転帰を評価項目としました。
結果:
857名を解析対象としました。胚移植後14日以内のSARS-CoV-2感染は生化学的妊娠率と関連しませんでした(aOR、0.74;95%CI、0.51-1.09)。胚移植後28日以内のSARS-CoV-2感染は着床率と関連しませんでした(感染群36.6% vs. 非感染群44.0%;P=.181、aOR、0.69;95%CI、0.56-1.09)。胚移植後10週以内のSARS-CoV-2感染は早期流産率と関連しませんでした(aOR、0.77;95%CI、0.35-1.71)。

≪私見≫

SARS-CoV-2感染妊婦は早産、妊娠高血圧腎症、帝王切開分娩、新生児合併症、妊産婦死亡、周産期死亡リスクが上昇するという報告がほとんどです。
生殖補助医療結果に関しては下記の報告が主要報告となります。

採卵前のSARS-CoV-2感染は妊娠率の低下と関連する報告があります。
 M. Youngster, et al. J Assist Reprod Genet,2022
ただし、無症候性または軽度のSARS-CoV-2感染歴の場合は、体外受精成績に影響を与えないとされています。
 M. Youngster, et al. Hum Reprod,2022
 M. Wang, Q, et al. EClinicalMedicine, 2021
 L.C. Delamuta, et al.Clinics (Sao Paulo), 2023

胚移植後早期(生化学妊娠・臨床妊娠率)は感染群の症例数が少なく、調整前データでは臨床的妊娠率に有意差があります。新型コロナウィルス感染の直接の影響ではなく体調不良が着床に影響を与えることがあるでしょうから、体調管理はやはり重要ですね。

#生殖補助医療
#COVID-19
#新型コロナウィルス感染
#早期妊娠転機
#亀田IVFクリニック幕張

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張