胚盤胞グレードが周産期予後に影響を与える?(Hum Reprod Open 2021)

胚盤胞グレードで産み分けができるとおっしゃられる患者様がおられ、最近の文献をみていると、こちらの文献がヒットしました。

≪ポイント≫

胚盤胞グレードが低いと、出生児性別差、帝王切開率が異なるとしています。胚盤胞グレードとSGA/LGA児との関連を示す論文は増えてきていますので今後注視していく必要があります。

≪論文紹介≫

Hu KL, et al. Hum Reprod Open 2021;2021:hoab036.

2013年1月から2019年12月までの凍結融解単一胚盤胞移植27,336周期におけるレトロスペクティブコホート研究です。周産期予後は北京大学第三病院の単胎分娩女性7,469名が解析対象となりました。多変量ロジスティック回帰を用いてリスク因子を検証しました。
結果:
グレードが低い胚盤胞移植は、女児出産が高く(48% vs. 42%、aOR = 1.26, 1.13-1.39)、帝王切開率が高くなりました(71% vs. 68%、aOR = 1.15, 1.02-1.29)。ICMグレードAと比較して、グレードBおよびグレードCでは、女児出産が低く(それぞれaOR = 0.83, 0.73-0.95、0.63, 0.50-0.79)、LGA児率が高く(LGA;それぞれaOR=1.23, 1.05-1.45)、1.47, 1.12-1.92)なりました。グレードC胚盤胞は巨大児リスク増加も認めました(aOR=1.66, 1.20-2.30)。TEグレードAと比較して、グレードCではSGA児リスクが増加しました(aOR = 1.74, 1.05- 2.88)。TEグレードBおよびグレードCでは、グレードAに比べて女児出産が高く(それぞれaOR=1.30, 1.11-1.53、1.88, 1.57-2.26)、妊娠糖尿病が低くなりました(aOR=0.74, 0.59-0.94、0.67, 0.50-0.88)。

≪私見≫

男女の産み分けがしたいときに、胚盤胞グレードや発育スピードが独り歩きしてしまうことがあります。
現在のところ、形態グレードが低い胚は女児出産が多いというのは複数の報告を認めています。
Oron G, et al. Hum Reprod 2014;29:1444–1451.
Lou H, et al. Reprod Biol Endocrinol 2020;18:72.

ビッグデータ解析を行う際、「大規模サンプルサイズの誤謬」の「タイプ1の誤り」(偽陽性)に注意しないといけません。論文を読むとき「p-ハッキング」や「データドレッジング」と関連する場合がありますので、他の研究者も再現性があるかどうかを確認することも大事だと考えています。

自然妊娠に関しては下記のようにASRM2022見解ではなっています。

  • 特定の性行為の方法と胎児の性別との関係を示す強い根拠はありません。生み分けできる根拠ある方法はないということになります。性別は男性・女性のどちらかですので、ある一定の方法を信じて行うと妊娠した場合、50%は期待する性別の子供が授かることになります。

自然妊娠するために知っておくこと(2022年改定:ASRM推奨)

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文責:川井清考(院長)

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