卵子の顕微授精時の成熟判定①
今回は卵子の顕微授精時の成熟判定についてお話します。
以前、卵子の採卵時の成熟判定についてお話しました。
https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_48.html
採卵直後の卵子は粒々の細胞である卵丘細胞に卵子全体を何層にも渡ってびっしりと覆われています。卵子が成熟しているのか?否か?を知ろうと思うと、この卵丘細胞を完全に取り除かなければ卵子本体の成熟度を知ることが出来ないため、卵丘細胞に覆われたまま卵子の成熟度を「間接的に」知る方法として長年用いられているのは卵丘細胞の形態から成熟度を「予測」するものというお話しをしました。
今回は、卵丘細胞を完全に取り除いた後の卵子本体の成熟度を判定する方法、2回シリーズの1回目になります。1回目は「見た目」での判定方法についてお話します。2回目は見た目だけではなく「中身」の成熟度の判定方法についてお話します。
採卵直後の卵子は粒々の細胞である卵丘細胞に卵子全体が覆われているので、卵子本体を直接見ることは出来ません。顕微授精を行うためには、この卵丘細胞を外して卵子を剥き出しにする必要があります。分厚いコートで厚着をしている卵子からコートを脱がせてあげるイメージです。こちらの動画の0:49-1:04辺りを御参照ください。
https://www.youtube.com/watch?v=cRQQUbrd0fw
卵子本体を直接見ると成熟度に合わせて3パターン(3段階)に分かれます。
GV卵子:未熟_成熟の二段階前の状態→顕微授精出来ない(受精しない)
見た目は、卵子中央近辺に丸い袋(卵核胞)があり、その中に丸い小さなボール(核小体)が見えます。この袋の中に女性の遺伝情報が入っています。
MI卵子:未熟_成熟の一段階前の状態→顕微授精出来ない(受精しない)
見た目は、GV卵子の中央に見えていた丸い袋が消えた状態です。厳密に言うと、GV卵子で見えていた丸い袋(卵核胞)が破裂して卵子の中に染み込んだようになり見えなくなった状態です。
MII卵子:成熟→顕微授精が出来る状態
見た目は、卵子の中から小さな小さな割球が外に押し出されて、大きな卵子の横に寄り添うように小さな粒(極体)が見えます。
卵子の顕微授精が出来る・出来ない状況を、女性の子供(結婚出来ない)・大人(結婚出来る)に例えると、
GV卵子:子供(小学生)→結婚出来ない
MI卵子:子供(中学/高校生)→結婚出来ない
MII卵子:大人→結婚出来る
となるでしょうか。
(*日本では女性は法律上16才から結婚出来ますので高校生でも結婚出来ますが、ここでは高校生は未だ子供で結婚出来ないことにします。悪しからず御了承ください。)
この女性への例えからも分かるように、成熟度の順番に並べるとGV→MI→MIIとなり、GVが成長してMIに、MIが成長してMIIとなります。
今回のお話から卵子の成熟度は見た目で判断でき、成熟して受精する準備が整った状態では、卵子の横に小さな極体が横に寄り添っていることがお分かり頂けたと思います。それでは「見た目」で小さな極体が出ている状態では「中身」も完全に成熟していると言えるのでしょうか?次回は卵子の「中身」の成熟度判定について説明したいと思います。
文責:平岡(培養室長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。