卵巣予備能低下症例にはPPOS法か低刺激法か(Front Endocrinol (Lausanne). 2023)

卵巣予備能低下女性は早発LHサージが起こす可能性が高いと考えられています。PPOS法は、早発LHサージを予防する上で優れており、低刺激と比較して生殖医療結果が改善する可能性があります。卵巣予備能低下症例に対するPPOS法と低刺激法の生殖医療結果を比較検討したメタアナリシスをご紹介いたします。

≪ポイント≫

卵巣予備能低下症例ではPPOS法が低刺激法に比べて、臨床妊娠率、有効胚率、累積妊娠率が増加し、周期キャンセル率・早期LHサージ率低下につながりました。

≪論文紹介≫

Guangyao Lin, et al.  Front Endocrinol (Lausanne). 2023 Aug 21:14:1232935. doi: 10.3389/fendo.2023.1232935.

2023年5月24日まで9つのデータベースを検索し、卵巣予備能低下症例にはPPOS法か低刺激かを比較した関連研究を調査しました。メタアナリシス結果を示すためにフォレストプロットを用いました。出版バイアス推定にはBegg検定とEgger検定を適用しました。
結果 :
4,182名が参加した合計14研究がメタアナリシス対象となりました。臨床妊娠率(OR: 1.39, 95%CI: 1.01, 1.91, p = 0.05)、有効胚率(OR: 1.50, 95%CI :1.20, 1.88, p = 0.0004)、累積妊娠率(OR : 1.73, 95%CI: 1.14, 2.60, p = 0.009)、刺激期間・ゴナドトロピンの量(MD: 1.56, 95%CI: 0. 47, 2.66, p = 0.005; SMD:  1.51, 95%CI : 0.90, 2.12, p < 0.00001)、周期キャンセル率減少(OR : 0.78, 95%CI : 0.64, 0.95, p = 0. 02)、トリガー当日LH値(SMD : -0.81, 95%CI: -1.10, -0.53, p < 0.00001)、早期LHサージ率(OR: 0.10, 95%CI: 0.07, 0.15, p < 0.00001)が減少しました。結果内の出版バイアスの証拠は明らかにされませんでした。
DOR のcriteriaは、AFC < 5~7 もしくは FSH ≥ 10IU/L もしくは AMH < 1.1ng/mLで検討されているようです。

≪私見≫

このメタアナリシスの欠点はレトロスペクティブスタディ24研究の比較である点、中国の地方雑誌での報告、pubmed掲載されていない報告も含まれている点です。ただし、卵巣予備能低下症例でPPOS法と低刺激法の優劣を比較したものはほぼないため、意義深い報告だと考えています。
PPOS法15症例とGnRHantagonist法15症例を比較して卵胞液中の顆粒膜細胞におけるmiR-4261のダウンレギュレーションとmiR-6869-5pのアップレギュレーションがPPOS法症例で起こっていました。これらの遺伝子は細胞増殖とアポトーシスに関与し、関連するpathwayはHippoシグナル伝達経路とWntシグナル伝達経路でした(Jiao Yu, et al.  Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2022 Sep:276:228-235.)。
刺激より卵子の質の変化は十分考えられると思っています。

文責:川井清考(院長)

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