発育卵胞数5個以下の採卵あたりの生児獲得率(J Assist Reprod Genet. 2023)

卵巣反応不良(poor ovarian response)はFerraretti APらが2011年に提唱した概念です(Hum Reprod. 2011)。卵巣刺激をおこなったのに発育卵胞が少ない場合、発育卵胞数が少ない場合の採卵あたりの生児獲得率を把握しておくことは患者様にとって通院回数・期間、費用・身体・心理負担をイメージしやすくする指標になると思います。
発育卵胞数5個以下の採卵あたりの生児獲得率を評価した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

トリガー時の発育卵胞数が5個以下の場合、発育卵胞数によって生児獲得率に差を認めました。35歳未満の場合は差を認めなかったため、若年女性では偶発的に発育卵胞数が少ない場合も治療継続する価値がありそうです。

≪論文紹介≫

Michelle J Bayefsky, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Nov 18. doi: 10.1007/s10815-023-02985-8.

2016年から2020年に卵子数が10個未満であった体外受精周期をすべて検討したレトロスペクティブコホート研究です。卵巣刺激は問わず、トリガー日に14mm以上の発育卵胞が5個以下を確認された周期を対象としました。主要評価項目は、新鮮または凍結融解胚移植後の採卵あたりの生児獲得率としました。副次評価項目は、回収卵子数、回収成熟卵子数、正常受精率、着床前診断をふまえた胚移植結果と異数性率としました。
結果:
972名1502周期(PGT-A:900周期)を対象としました。平均回収卵子数、成熟卵子数、正常受精数、PGT-A後胚盤胞の移植割合、胚盤胞異数性率は卵胞数によって異なっていました(p < 0.001)。全年齢群において、卵胞数に関連する生児獲得率に差を認めました(p < 0.001)。しかし、35歳未満女性では、生児獲得は卵胞数による差は認めませんでした。35-40歳女性の生児獲得率は、発育卵胞数1-3個の場合は20%未満、4-5個の場合は25-40%でした。41歳以上女性の生児獲得は、発育卵胞数1-3個の場合は5%未満、4-5個の場合は15%未満でした。

≪私見≫

過去にも同様の報告があるようです。
Reichmanらは40歳以下女性の場合、発育卵胞1個の場合の生児獲得率は4.5%、2個の場合の生児獲得率は14.1%、3個の場合の生児獲得率は19.3%とし、40歳以上女性では、1個の場合の生児獲得率は0%、2個の場合の生児獲得率は3.7%、3個の場合の生児獲得率は4.0%としていますし、Shremらは発育卵胞が1個または2個の患者の生児獲得率は34歳以下で15.6%、35~39歳で6.5%、40歳以上で2.7%としています。
女性年齢だけに着目した成績ではなく、発育卵胞数に着目して患者様に情報提供していくことが生殖補助医療の治療計画の際には大事かもしれません。

文責:川井清考(院長)

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